両片想いのスナップショット① 同棲のルール


 同棲し始めたはいいものの、お互いどこまで踏み込んでいいか分からない。しかも、男女ということもあって、デリケートな部分はあまり見られたくないというのが本音……いや、建前ですね。俺はカエデになら見られても……って違う、そうじゃない!


 非常事態に遭遇した際、あらかじめルールを決めておくことでスムーズに対処できるでしょうということになり、カエデが買ってきたホワイトボードにお約束を書き記すことになった。


「じゃあまずは私からね~」


 油性ペンを持ちながら呟くカエデ。はにかむ様子が可愛い。


・同棲三か条

一、朝の「おはよう」と夜の「おやすみ」は必ず言うこと。

二、洗濯物は一緒にして洗うこと。

三、着替えはお互いに見えないところで行うこと。


「どうよ、この三か条はっ!」

「足りない。大いに足りない」


 がーん、という表情を浮かべながら彼女は悲しむ様子を見せた。そりゃそうじゃん、非常事態というより日常生活の話だよね、これ。


「たとえば……これはあった方がいいな」


 四か条以降をホワイトボードに書き記していく。


四、自分で出した食器や飲み物はきちんと自分で片づけること。

五、お風呂はあらかじめ順番を決めておくこと。

六、朝の登校前にお互いの制服姿を確認すること。


「ちょっと待って、五はいいとして、四と六は理解できないんだけど!」


 六は補足が必要だけど、四は当たり前だろうが……! そう思って彼女にいちゃもんを付けていく。


「カエデ、君はちょっと甘すぎるんだよ。家事ができない女の子に育ってほしくない」

「え……た、たしかに。でもほら……仮に万が一だよっ? しょーたがわ、私を……お嫁にもらってくれるなら……ぜ、ぜんぶ解決だとおもわない?」

「……お、俺がお嫁にもらうとしても、家事ができないのはちょっと」

「やります」


 ちょっと心細いよ。だって、俺が熱を出した時は誰が看病するんですかって話になっちゃうし。……って言おうとしたところで、カエデが即答した。変な意味に捉えられていないか心配になるが……まあ、納得したのならいいんだ。


「それで、六はどうして?」

「身だしなみは大切だろ? 君も生徒会長なんだから、だらしない姿を見られたくない」

「つまり私のため……」

「い、いやほら! 俺だってほこりが付いてたら恥ずかしいからさっ? ね、分かるでしょ?」


 本当は、毎日君と顔を合わせたいってだけなんだよね……。まあ、言わないけど。

 あれ、ちょっとカエデさん、話聞いてますか?


「う、うん。そうだね……」


 反応が悪いものの、とりあえずはこの六か条で生活していくことになりそう。


「改めてよろしく、カエデ」

「こちらこそよろしくねっ、しょーた!」


 こうして、二人の同棲生活が本格的にスタートする。



・同棲六か条

一、朝の「おはよう」と夜の「おやすみ」は必ず言うこと。

二、洗濯物は一緒にして洗うこと。

三、着替えはお互いに見えないところで行うこと。

四、自分で出した食器や飲み物はきちんと自分で片づけること。

五、お風呂はあらかじめ順番を決めておくこと。

六、朝の登校前にお互いの制服姿を確認すること。

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