2023-12-19祈りを捧げよ
十二月十九日
昼頃に本を読んでいたら、外でフィ姉さんが何かをしている音が聞こえる。様子を見に行くと、家の庭に大きく魔方陣を書いていた。もちろん1から9までの数字を並べたやつじゃなくて、円形の内側に紋様を書き込んだ魔術的な意味合いのあるものだ。
「おっ、少年いいところに来たね。今から祈るから、手伝ってよ」
そう言って、跪いて祈りを捧げ始める。両手を組み合わせて、杖は足の横に置いている。
「俺もですか?」
「いいから、いいから」
言われるがままに見よう見まねでポーズを取って、横に並ぶ。
思えば地球にいた頃は日本人だったので、あまり祈るという行為をしたことがなかった。とりあえず心を集中させればいいのだろうか。
目の前の魔方陣は一体何なのか。悪魔召喚でも始めているのなら……と考えること三十分ほど、フィ姉さんが立ち上がる気配がして目を開けた。
「完成、もう大丈夫だよ」
果たして目の前には大型の窯が作られていた。レンガ造りの本格的な姿をしている。
フィ姉さんは窯の機能の点検を終えた後、今年も成功だったね、と言った。
「窯ですけど……。これどうやって作ったんですか?」
「そりゃ、魔法だよ魔法。魔法以外のことしているように見えた?」
「祈っていたから、何か宗教的な儀式なのかと」
「これくらいの大規模魔法になってくると、本当に動くかもわからないからね、祈りたくもなるんだよ」
聞けばこの窯は、クリスマスに八面鳥(八つの顔が八方を向いているため末広がりで縁起が良いとされる鳥)を焼くために毎年作るものらしい。千年ほど前から使い続けている魔法なので、今でも動くかどうかが毎年不安になって祈りを捧げているそうだ。
もう、何を意味している魔法陣なのかも覚えていないらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます