2023-12-18絶叫雪だるま
十二月十八日
夜中に何か凄い音がした気がして目が覚めるが、あまりに眠かったのでまた眠ってしまう。
次に起きると、寝室のドアを巨大な雪だるまが塞いでいた。三段重ねで、頭にバケツを被っている本格的な雪だるまだ。窓から外を見ると一面の雪。そしてフィ姉さんが窓から顔を出してこんにちは。
「ハッピー・雪の日! 特に記念日とかではないけど、君に雪だるまのプレゼントだ!」
満面の笑みである。大人げない、というかエルフげないというか。フィ姉さんはエルフなので凄く長く生きているはずだけど。
「外、出られなくないですか?」
「雪だるまを倒さないと出られないよ」
「窓から出るのは?」
「私が邪魔します」
仕方がないので寝室にあった箒を持って雪だるまに対峙する。よく見るとチャーミングな顔をしていて壊すに忍びない。
地球でよく見ていた雪だるまと違うのは、鼻にあたるニンジンが逆向きに刺さっていることだろうか。地球だとニンジンの尖った部分が外のような気がするが、目の前にあるのは緑の部分が外側になるようになっている。なるほど、こちらの顔も可愛く見える。
おそるおそる箒の柄で雪だるまを突き刺してみるが、特に反応がない。反撃などはしてこない、のか?
窓の方を見るとフィ姉さんがにやにやと笑っている。
なんだか苛立ったので大胆に箒で切り付けてみた。
しかし特に何も起こらない。
何回か攻撃すると雪だるまもボロボロになってきて、最初に頭の部分が崩れ落ちた。
『ギャアアアアアアアアァァァァァアァァァァァ!!!』
「うわぁっ!?」
箒を放り出して尻餅をつく。急に足元から凄い音がする。窓の外ではフィ姉さんが大笑いしている。
しばらくすると大声のようなものはおさまって、足元を見るとニンジンに手足と目鼻がついたような野菜が転がっている。泣きじゃくった後の子供のようなくしゃくしゃの顔だ。
これは、マンドラゴラ?
「わはははは! ひぃー。やあ、面白い。子供にこれを仕掛けるのが私の一番の楽しみだったんだ! 今じゃあみんな知っているから、誰もびっくりしてくれない! ありがたいねぇ、君って!」
フィ姉さんが笑いながら窓を開けて入ってくる。そして泣きつかれたマンドラゴラを拾うと、持っていた植木鉢に植えなおした。
「これね、引き抜いたら悲鳴を上げて、悲鳴を聞いた人は死ぬ野菜なの。死ぬのは無毒化しておいたからね、悲鳴上げるだけ。ふっ。びっくりしたでしょう?」
しぶしぶ、とても驚いたと伝える。
このイタズラはフィ姉さんが子供の時からやり続けているそうだ。今では人間にも広まって、雪の日の定番になっているのだとか。
昨日の夜から雪が降っていたので準備していたそう。大きな音がしたと思ったら、マンドラゴラが一度抜かれた音だったのか。
最近は、鼻を引き抜くと大きな音がする木彫りのおもちゃまであるらしい。
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