2023-12-12杖の日
十二月十二日
「レインボー・スプラーッシュ!」
今日は起き抜けにフィ姉さんから魔法を放たれた。途端に全身が虹色に光り輝き始める。まだ異世界の暮らしに慣れていなくて薪も割れない小僧にする仕打ちとは思われない。右手に小ぶりの杖を持ったフィ姉さんはにこにこの笑顔である。
「ハッピー・杖の日! 少年、この世界では今日は杖の日という記念日なんだ。由来を教えてやろうじゃないか」
朝食のよく分からない肉とよく分からない野菜の煮込みを食べた後、ようやく俺が落ち着いたので物知りエルフが話し始めた。
「かつて、魔法って杖を使っていなかったんだ。大体素手でね、安定性のない魔法を運任せで使っていたらしいんだよ」
魔法に杖が必須なことも初耳である。ファンタジーでもその辺の扱いってまちまちだし。
「それで、杖を使った画期的な魔法の使用方法が発明されたんだよね。こりゃあ効率がいいってことでそれが一気に普及して、魔法まわりの技術レベルが格段に上がったことがあるんだよ。それで、今日はその発明家の命日ってわけ」
「あー、有名人の記念日って命日がちですよね。それと、俺が今虹色なことって関係あります?」
「それがね、杖を使ってその人を讃えながら遊ぼうってことになって、お互いに相手を虹色にする魔法をかけあうって行事があったんだよ。百年位前までかな」
「今はやっていないんですか?」
「やってない、のかなー。もしかしたらどこかではやってるかもね」
首をかしげるフィ姉さん。多分、この近辺で虹色になっているのは俺だけなのだろう。
「せめて、今流行っている行事を吹っかけて欲しいんですけど」
「いやね、エルフは人間とかの時間感覚ってよくわからなくて。流行り廃りって激しすぎて困っちゃうよ。確かこの行事が廃れたのって、虹色から戻れなくなる人がいたからだったかなー。ウンコまで虹色になったらしいよ。面白いよね」
「俺にかけたのって、もしかして同じ魔法だったりします?」
「あー、うん、そうそう。私は魔法の改良とかできないからね。当時のままだと思う。大丈夫大丈夫、ほとんどの人は元に戻ったから」
寝る前になるまで戻らなかった。
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