13-3.決戦 朱雀会




 目の前にいたのは金のアンバンヘアー。



「たく、み?」



「んだよ、その顔。オレが来てやったんだ。しっかりしやがれ」



「なんで......もう自分は破門なんでしょ?」



「......気まぐれだ気まぐれ」



「気まぐれって......」



「ああもうっ! ごちゃごちゃうるせぇな!」



 胸ぐらを掴まれて引き寄せられる。



「お前がいねぇと映画もつまんねぇし、ポップコーンもクレープも美味くねぇんだよ! さっさと戻って来やがれバカヤロォ!」



 乱暴な言葉、真っ赤な顔。



 ......なんだろ。胸が温かくて、目頭が熱い。



「なっさけねぇ面。お前はここで休んでろ」



「あらぁ? あなた、この子のお友達? ......ん? あなたどこかで......」



「友達じゃねぇ。兄貴だっ!」



 弾けるように飛び出したたくみの蹴りが不死川の顔を襲う。



 が、不死川はそれを華麗にかわす。



「やっはりこの攻撃......ひょっとして、前公園で戦った女の子かしら?」



 ジャブ、アッパー、ストレート、変則蹴り......


 手を変え品を変えたくみが多彩なバリエーションで攻撃を仕掛けるが不死川には届かない。



「ちぃっ! ちょこまかと!」



「あははっ! 無駄! 無駄ですわ! その程度で私に当てようなんて一億年早いですわ!」



 たくみの表情がどんどん疲弊していくのがわかる。



 そりゃそうだこんなに激しく仕掛け続ければ体力はすぐに底をつく。



 勝つには何か......何かが必要だ。



 一瞬でいい。一瞬、不死川の動きを止めることが出来れば。



 ふと、たくみと目が合った。



「戦いの最中によそ見とはいい度胸ね!」



「ちぃっ!」



 たくみが何かを訴えている。そんな、気がした。



「くっ!?」



「おほほっ! 息が上がって来てますわよ!」



 追い込まれたたくみの体勢が崩れる。それを見逃さず不死川が間合いを詰める。


 やるならここしか、ない!



「うわぁああああっ!」



 不死川の脇腹にタックル。


 たくみに集中していたせいか、不死川の腰に上手く抱きつけた。



「なに!? く、くそ! 離しなさい!」




「死んでも離すかぁっ!」




「よくやった」




 空を舞うたくみ。


 その姿はまるで、前テレビで見たフィギュアスケーター。



 高速回転するたくみが不死川に、迫る。



「これで終わりだぁああああっ!」



 高速回転から放たれた蹴りが不死川の顔にクリーンヒット。


 

 抱きつく不死川の身体から力が抜ける。




「おい勇人っ! いつまでそいつに抱きついてんだ!」



「えっ!? あっ、ごめん!」



「ちっ! まあいい。おい取り巻き共。取引だ。この女助けたきゃ、鹿山勇人の借用書よこしな。持ってんだろ?」



 取り巻きの1人がたくみに借用書を渡し、床に寝かせた不死川を素早く抱き抱えた。



「テメェら、この女連れてさっさと消えろ。この先、こいつに手ェ出すなら、龍鳴会にケンカ売ると思え。いいな?」



 凄むたくみ。撤退する黒服の達。



 全部、終わったんだ......



「おい、勇人。その、悪かった。不死川に負けたこと、お前に当たっちまった。龍鳴会に戻ってこいよ」



「......うん。あ、あれ?」



 ふらつく身体。ぼやける視界。



 頭が回らない。身体の力がだんだん抜けていくーー




「おい勇人!? 勇人っ!」



 龍鳴会に戻れる。



 安心したのかまるで麻酔でも打たれたみたいに、意識が遠のいていった。

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