エピローグ.転校生




 開いた口が塞がさらないとは、まさにこういうことを言うんだろう。



 隣のたくみはというと、最高潮に不機嫌そうな表情だ。



 学校、教室。



「初めまして。今日からこのクラスでお世話になります、不死川茜と申します。よろしくお願いします」



 拍手喝采。



「うおぉおおおっ! 可愛い!」



「あの子、めっちゃレベル高いぞ!」



 深々と頭を下げた転校生、不死川茜のあいさつに教室中から声が上がる。主に男子から。



「おい勇人、これは一体どう言うことだ」



「そう、言われても困るんだけど......」



 不意に不死川と目が合う。



「おやぁ? そこにいるのは鹿山勇人さんじゃないの?」



 白々しい......


 だがそんな事を言えば、否が応でも全員の視線が自分に集まるわけで。



「知り合い、ですか?」



 先生の問いに不死川が頷く。



「ええ。彼は私の下僕ですわ」



『下僕!?』



「ちょっと誤解招くようなこと言わないでくれる!? みんな困惑してるんだけど!」



「事実ですわ。借用書破った程度で全てが反故ほごになると思ったら大間違いよ」



 ーードゴン!



 隣から聞こえた机の悲鳴。



 額に青筋を浮かべたたくみが机に拳を突き立てている。



「黙って聞いてりゃ、好き勝手喋りやがって」



「あらぁ? 竜崎たくみさんじゃありませんの。あなたもいたの? 気づきませんでしたわ」



「んだとコラッ!」



「おやぁ? それにあなた制服が違うんじゃ......」



「わぁあああああっ! 不死川さん! ストップ! それ以上はストップ!」



「ふふ。まあいいわ。下僕に免じて今は許してあげる」



「おいこらぁ! 勇人はオレの舎弟だ! お前の下僕じゃねぇ」



 睨み合う両者。


 ポカンとする先生と目が合う。



「えーっと、鹿山君、知り合いみたいだから不死川さんのことよろしく。あ、不死川さんの席、鹿山君の横......竜崎君の反対隣ね」



「というわけで改めてよろしく。竜崎さん、鹿山君」



 鼻歌混じりで歩いて来た不死川が隣に座る。



 竜崎さんが女であることを知る不死川。



 ......不安でしかない。



 竜崎さんの秘密、守り切れるかなぁ。

 

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♂極悪ヤンキー♂ 竜崎たくみ君(?)には誰にも言えない秘密があるっ! @HEHEI

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