9-2.映画デート





「いやー! あの大画面と大音量は病みつきになるな!」



 ショッピングモールを出てすぐの公園で、満足げな表情で伸びをするたくみ。



「ポップコーンも美味いしな!」



「だね」



 と言っても、いちごミルクのポップコーンはほとんどたくみに食べられちゃったんだけど。



 映画の内容もよかったし、喜んでくれたみたいでよかった。




「ていうか、あのシーン最高じゃなかったか!? 主人公が悪役を一刀両断するところ!」




 見た映画はちょっと前にやっていた任侠物にんじょうものドラマのスピンオフ作品。



 実はそのドラマ見たことなくて、見る前は不安だったんだけど、初見でも楽しめる大満足の内容だった。



「......んだよその顔......楽しくなかったのか?」



「えっ!? や、そんな事ないよ!」



「だってお前、ドラマ見た事ないんだろ?」



「でも充分楽しめたよ! たくみが言ってるの、あのシーンでしょ? あの悪役性悪だったから成敗されてスカッとしたよ!」



「.........だろ?」



 不満そうな顔だったたくみがニヤッと笑う。



「オレのチョイスだからなー! あー! また映画観たいなー!」



「また観にこようよ。そんな難しいことじゃないしさ」



「ああっ!? 映画観るたびにこんな格好させられんだぞ!?」



「それは......たつさんの趣味でしょ? 別に今日みたいな休日じゃなくて、学校の帰りとかに寄り道してもいいしさ」



「お! それいいな!」



 満面の笑みで振り向くたくみ。



「う、うん......」



 なんでだろ。なんでかたくみの顔、直視できない。



「なら次はお前が映画選べよ! その次はオレ。そうすりゃお互い楽しめるだろ? よし! 来週も観に行くぞ! なに観るか考えとけよな!」



 まるでイタズラっ子みたいな顔になったたくみがきびすを返して再び前を歩く。



 なんだよこのぞわぞわする感じ......


 こんなの、生まれて初めてだ。



「あっ」



 前を歩くたくみが不意に足を止めた。



 たくみの視線の向こうーーそこにあったのはキッチンカー。


 掲げられた登りにデカデカとクレープの文字が風に揺られて踊っている。

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