7-3.だったら運命に抗いやがれ!




 腕を掴む男から逃れる為に身体をひねる。


 だが、この体格差。中々抜け出す事ができない。



「クソッ! 離せぇ!」



「テメェ! 大人しくしろ! はぶっ!?」



 屈強な男が発した気の抜ける声。



 駆けつけたたくみの蹴りが、男の顔面を振り抜いたのだ。



 たくみの蹴りで地面にうずくまって動かなくなった男の拘束から脱出する。




「ありがと! たくみ」



「ふん。まあ、お前はオレの子分だからな」



「おい、どうした! しっかりしろ! こいつが一撃で気ぃ失うだと!? テメェ何者だ!?」



「テメェらに名乗る名はねぇよ。さっさと消えろ」



「くっ......い、いいのか!? オレ達はただのチンピラじゃねぇ! 朱雀組すざくぐちの組員だ! オレ達に手ぇ出したらお前らの身内全員......へぶっ!?」



「朱雀組? 知らねえな。売られたケンカはいつでも買うぜ。さて」



 たくみがすっかり伸びてしまった細身の男の手から借用書を取り上げ、ビリビリに破り捨てる。



「これからどうすんだ? お前、間違いなく朱雀組とやらに追われるぞ」



「.........うん」



 正直、どうしたらいいかわからない。


 父親が蒸発したって事は、もうあのアパートに住む事はできないだろうし、恐らく学校にも通えなくなる。でも、



「わからない。でもわからないからこそ、自分のやりたい事、やってみるよ。たくみに言われた通り、運命に、抗ってみる」



「いい顔だ。よーし決まりだ! 今から家帰って必要な荷物持って龍鳴会に来い!」



「えっ!? そんな悪いよ! それにそんな事したら龍鳴会のみんなに迷惑かけちゃう!」



「お前さっきもっとオレと一緒にいたいって言ってたじゃねぇか」



「それは、そう、だけど......」



 さっき咄嗟とっさに飛び出た言葉を思い出して顔が熱くなった。



 もっとたくみと一緒にいたい。



 同級生の女の子ともっと一緒にいたいって、告白みたいなもんじゃん......



「どうした? 顔が赤いぞ」



「あ、いや!? 何でもないよ!」



「心配すんな。ウチの組員なんてみんなお前と似たようなもんだ。それにお前はオレの子分。子分の困りごとは兄貴が解消するもんだ」



「たくみ......」



「だがその分、お前には24時間、365日みっちりオレの世話してもらう。いいな?」



「はい! よろしくお願いします!」



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