7-2. だったら運命に抗いやがれ!
柄の悪そうな二人組だ。
1人は細身で紫のスーツにヒョウ柄のシャツにサングラス。
もう1人は黒いシャツと白いパンツ。首にかけた鎖みたいな金のネックレスが目を引く。
細身の男とは対照的ながっちりとした体格。
「あ? 何のようだ」
睨むたくみに細身の男が笑う。
「テメェじゃねえ。用があるのはお前の後ろの鹿山って奴だ」
「じ、自分ですか」
「そうだ、お前だ」
口角を釣り上げた細身の男は、スーツの内ポケットから一枚の紙を取り出した。
紙の最上段には『借用書』の3文字。
「
心臓がドクンと跳ねる。
「鹿山悠介は自分の、父です」
「これはお前の親父の借用書だ。あのクソジジイ、オレらから1億円借りて、逃げやがった」
「父さんが、逃げた?」
「そ! ここわかる? 連帯保証人の欄のとこなんだけどさ」
細身の男が指差した所には鹿山勇人の名前。
「だからクソ親父の代わりに、お前に金請求しにきたってわけ!」
「自分、そんな大金持ってません」
「わぁってるよ。おい」
細身の男の合図に頷いた大柄な男に腕を掴まれる。
「払えねぇ分は身体で払うってのが相場ってもんだ。連れていけ」
引っ張られた身体がなす術なく道路の脇に停まっている車の方に吸い寄せられている。
なす術というか、正直抵抗する気が湧かない。
父親に裏切られた。
ほとんど帰ってこないし、生まれてからまともに話したことのない親だったけど、予想以上に心が
諦めよう。こうなる、運命だったんだ。
「勇人。テメェはそれでいいのか?」
............。
「こうなってるのは親のせいか?」
............親の、せいだろ。
「その男の腕を振りほどかねぇのは、お前の意思じゃないのか? テメェが諦めてるからじゃねぇのか?」
「じゃあ、どうすりゃいいんだよ......どうすりゃいいんだよ......!」
振り向いた先、たくみが堂々とした態度で腕を組んでいる。
その強い眼差しを直視できずに、アスファルトの方を向く。
「勇人、お前の想いを吐き出せ」
「自分の、想い......」
「お前はどうしたいんだ?」
「自分は......」
頭に浮かんだのは昨日の龍鳴会の晩ごはん。
あんな楽しい食事は初めてだった。
みんな本当に楽しそうで、もっともっと一緒にいたいと心の底から感じた。
こいつらに連れていかれるか。
また、みんなに料理を振る舞って喜んで貰うか。
どっちがいいか。そんなの、決まってる。
「もっと......もっとたくみと一緒にいたいっ!」
「だったら運命に抗いやがれっ!」
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