3-1.龍鳴会会長




 生きた心地がさっきからしない。



 目の前には絢爛豪華けんらんごうか金襖きんぶすま



 そして右隣に竜崎さん、左隣には若頭と呼ばれてた顔面傷まみれの人。たしかたつさん。



「会長、ただいま帰りました」



 会長。


 竜崎さんの声に背筋が凍る。


 この先に竜鳴会のトップが、いる。



「おう。開けなよ」



 年齢を感じる重厚感のある声。


 竜崎さんが開けた襖の向こう側に、思わず息を呑む。


 だだっ広い空間。



 そこに座る白髪の老人。あれが、悪名高い龍鳴会の、会長。



 さぞ恐ろしい鬼のような面相の屈強な人を頭に想像していたんだけど、全然ちがった。



 優しげな笑顔を浮かべる白髪のおじいさん。



 自分と目が合って、ちょっと驚いたような表情をしたのち、すぐに優しげな表情に戻った。



「見慣れない顔だね。たくのお友達かい?」



「えーっと......」



「おいてめぇ! 頭下げろっ!」



「ごめんなさいっ!」



「......おい、たく。ご友人に対してやけに偉そうじゃねぇか。てめぇ、いつからそんなに偉くなったよ? おお?」



 竜崎さんに頭を押さえ込まれているので、おじいさんの表情はわからない。



 だがその冷たく重たい声が、身体を突き抜けて身体に寒気が走る。




「ご、ごめん、じいちゃん」



 竜崎さんとは思えない弱々しい声。


 同時に頭を押さえる力が弱まる。



「ご友人。孫が大変失礼しました。顔をお上げ下さい。改めてお名前は?」



鹿山勇人かやまゆうとです」



「勇人さんか。いい名前だ。たくみが友達を家に連れて来たのはあなたが初めてだから、組のもんも、さぞテンパった事でしょう。みっともない姿、さらしてませんか?」



 言葉の後、眼光が鋭くなる。視線の先にいたのはさっき若頭と呼ばれていたたつという人だ。



「す、すんません頭っ! 舎弟しゃてい粗相そそうは兄貴たるオレの粗相ですっ!」



 涙を流した辰さんが、羽織はおっていた着物をはだけさせ、その場に両膝をつく。



「これで、勘弁してくだせぇ!」



 腰に下げていたを取り出した辰さん。



 それが真ん中あたりでゆっくりと二つに分かれる。



 中から出てきたのは、照明を不気味なほど綺麗に反射する長細い刃物。


 辰さんがそれを畳に勢いよくブッ刺した。



「か、刀ぁ!?」



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