2-1.竜崎たくみの秘密




「来たか。逃げずにここに来たことは褒めてやる」



「......もう、身バレしてるし、隠れても無駄でしょ?」



 授業後、体育館裏。



 壁にもたれる竜崎君と視線がぶつかる。



 ギラついたナイフのような視線。感じる恐怖。



 普段なら秒で目を逸らすのに、生まれてしまった疑問と好奇心のせいで竜崎君から視線を逸らせない。


 

 透き通った白い肌。整った顔のパーツ。


 ケンカ無敗、人間凶器と呼ばれる割には細い四肢。



 見れば見るほど竜崎君が女の子に見えてくる。



 聞きたい。



 今も手に残るあの感触の正体を、突き止めたい。



「竜崎たくみ君。君は、女の子、なの?」



「はぁっ!? バッカ! ちげぇし!」



 .........え?



「えと......めちゃくちゃ声、裏返ってるけど」



「ううう、裏返ってねぇし! てかオレ男だし! なんか証拠でもあんのか!?」



「証拠っていうか、そんなに必死に否定するって事は逆に肯定してるのと同じっていうか......」



 え、え、ええっ!? ちょっと待って! ほんとに竜崎君、女の子!?


 じゃ、じゃあこの手に残る感触は......



「て、てめぇ! なんだその気持ち悪りぃ手の動きはっ! はっ! やっぱりオレが女ってわかったのはやっぱり!」



 赤面した竜崎君(?)が近づいてきて自分のネクタイを掴む。


 てか今しれっと女の子って認めてなかった?



「こ、殺す!」



 待って待って! 足が地面から離れてる! このままじゃ、首が締まってまた気絶する!



「き、きゃああああっ! 先生! 誰かがケンカしてます!」



 不意に背後から聞こえた女子生徒の声で首にかかっていた凶悪な力がゆるむ。



「ちっ! ここじゃ目立つか。場所変えるぞ。ついてこい」



「ぐえぇっ!?」

 


 ネクタイを引っ張って駆け出した竜崎君(?)と一緒に体育館裏から逃げ出した。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る