第40話 光るなら
振り返ってみれば、いつも自分の事だけしか考えていなかったように思う。
突然見知らぬ異世界に召喚されて、魔王を倒せと命じられた時も、世界の平和なんてどうでもよくて、ただアリシア姫との婚約を取り付けるために了承したようなものだし。
実際に魔王と──ルトと対面した時だって、想像とまるで違った美少女という私情だけで討伐を躊躇し、結果、ずるずると戦いを引き延ばしてしまったし。
ルトと関係を持ってしまい、過去に起きた大戦の真実を知ってしまった時も、誰にも何も明かさずにひっそり身をくらませようともしていた。
そして一番最低なのが、ルトの妊娠を知って、フレイヤに言われるがままに──それこそ反駁すらできずに、魔王城を出て行こうとしていた事だ。
我ながら本当にどうしようもないクズ野郎だと思う。罵詈雑言を浴びせられても仕方ないくらいだ。
けれどルトは、そんなろくでもないカケルですら許容してくれた。
こんな最低最悪なダメ人間を、ルトは変わらず愛してくれていた。
私は大丈夫だと泣きそうな笑みを浮かべて。
全然大丈夫じゃないくせに、自分の気持ちを必死に抑えてまで、カケルを安全地帯へと逃がそうとしてくれた。
ただでさえ妊婦という多大なリスクも背負っているのにも関わらず、アレス達と真っ向から渡り合って。
いつだってルトは、誰にも相談せずに一人で何もかもを抱え込もうとしていて。
だから、今度こそ。
今度こそ、オレが──!
◇◆◇◆◇◆
ひり付くような静寂が降りる。その場にいた誰しもが、唐突に現れたカケルに虚を衝かれていた。
「……これは、一体全体どういう状況なんだろうね?」
ややあって、アレスが言葉に険を籠らせつつ、乱入者であるカケルに双眸を凄ませる。そしてリタもカンナもその言葉にハッと我に返ったようにそれぞれの得物を持ち直した。
やはりルトを追い詰めるだけの──ルトの不調という偶然が重なったおかげもあるが──実力者なだけあって、すぐに態勢を整えてきた。先ほどまで呆気に取られていたのが嘘のようだ。
しかし動揺までは隠せるまでに至らなかったのか、三人共困惑したように顔を
無理もない。なぜなら、彼らの目の前にいるのは──
「どうして僕達と同じ人間が、あろう事か魔王を守ろうとしているのかな?」
ミストルティンを構えたまま、アレスが渋面になって疑問を零す。アレス達からしてみれば、人間が魔族を──それも魔王を庇っているのだから、その疑問も当然だと言えた。
「ひょっとして、魔族が人間に化けてウチらを騙そうとしてるんじゃないっスか? ウチらが混乱している間にあの剣でズバッとやる算段だったとか」
「いえ、それはないでしょう。彼からは魔族特有の禍々しいオーラを感じません。彼は間違いなく私達と同じ人間です。」
カンナの疑問に、リタが間髪入れず否定する。何がどう違うのかはカケルにはわからないが、魔法使いである彼女にしかわからない感覚──第六感じみたものがあるのだろう。
「という事は、彼は本当に人間なんだね……」
ゴクリと緊張と一緒に生唾を嚥下するアレス。視線は未だカケルを捉えたままだが、時折心中をさらけ出すように瞳を微細に揺らしていた。
警戒しているみたいだが、少なくともすぐに斬り捨てるつもりはなさそうだ。おそらく、カケルの人物像を推し量っているからなのだろう。
そうして、しばらくの間互いに睨みを利かせた後──
「……一体どういうつもりなのかな、これは」
と、張り詰めた雰囲気の中、アレスがおもむろに疑問を投げた。
「君は人間だよね? どうしてここに居るのかと訊ねたい所ではあるけど、それよりも先に問わなければならない事がある。問い正さねばならない事がある。ねえ君──君は何故そこの魔王を守ろうとしているんだい?」
「事情がある……ってだけじゃあ納得してくれないんだろうな……」
苦笑を滲ませながら、カケルは柄を両手で力強く握り締める。心臓は早鐘を打ち、全身が粟立つ。
アレス達が全力で猜疑心を向けている中、どこまで話し合いに応じてくれるかはわからない──だからと言って人間同士と刃を交えたくなどない。それはアレス達とて同じはずである。
互いに意見を交わさないまま即座に力で訴えるだなんて愚の骨頂だ。無用な血など──まして人間同士で争って血を流すだなんて、想像しただけで背筋が凍る。
「話がある。少しの間だけで静聴していてくれないか?」
「……そんな事言って、ウチらを油断させておいてから、その隙に襲おうとか考えてるんじゃないんスか?」
「それは絶対にない。約束する」
カンナの疑念に満ちた問いに、カケルは真摯に答える。だが状況が状況なだけにやはりと言うべきか、カンナは信用ならないとばかりに目を眇めた。それはリタも同様で、両者とも隙あらばすぐにでも飛び掛かってきそうな気概を覗かせていた。
「落ち着いて、二人共。とりあえず話だけでも聞いてみようじゃないか」
と、殺気を
「それで? 話がしたいと言うぐらいなんだから、この戦いを止めるだけの価値はあるんだろうね?」
「……正直、お前らの受け取り方次第だけどな」
そう前置きしつつ、カケルは訥々と語り始めた。
かつてこの世界で行われた大戦──人類と魔族が初めて戦争するに至った経緯……それが実は人間側によって端を発していたという事。
初代魔王が屠られた後、ルトの代に至るまで一度たりとも人間の大陸に攻めたりなどしていないという事。
そして現在暴れ回っているのは、その殆どが知性の無い獣型の魔物による仕業なのだという事。
主にその三つ──特にルトに非はないという部分だけ重点的に告げた後、カケルは深く吐息を漏らした。
「──とまあ、そういうわけなんだ。だから大昔の戦は魔族側にも原因はあったにしろ、ルト……現魔王は何も悪くないんだ。つまりはさ、オレら人間が魔族達と敵対する理由なんてどこにもないんだよ」
つまり、現状脅威になっているのは、獣型の魔物だけって事だ。
そう注釈を入れて、カケルはアレスらの返事を待った。
見ると、アレスは先ほどまでの話を吟味するように、顎をさすりながら瞑目していた。てっきり荒唐無稽だとすぐに切り捨てらられるんじゃないかと危惧していたが、ちゃんと考慮してくれているようだ。
そうして、しばらくした後に「なるほど」と頷いてみせた。
「過去の大戦に秘められた、血塗られた真実に、魔王の保守的思想。そして魔族と獣型の魔物の違いか。実に興味深い話だね」
「そ、そうだろっ? だからオレ達がこんな風に対峙する必要なんてどこにも──」
「だけど、信用するまでには至らないかな」
その返答に、カケルは驚愕に目を見開いた。
「な、なんでだよ……」
知らず声が震える。微かに抱いた期待を正面から絶たれたような絶望感が胸中を駆け廻る。
「なんでなんだよ! さっきも言っただろ! 魔王は何も悪くなんかないんだよ! 悪いのはご先祖様達だけで、魔王を倒す必要なんて──今の人間と魔族が争う必要なんて微塵もないんだよっ!」
「確かに君の話を聞く限り、これまで魔王が先陣を切るところを見た者はほとんどいないし、獣型の魔物が圧倒的に数を占めているのとは相対的に、魔族がやたら姿を見せないのも辻褄は合うと思う。けどどれも推論ばかりで確たる証拠はない。それとも君は、僕達を納得させるだけの証拠を持ち合わせているのかな?」
「そ、それは……」
思わず言葉を詰まらせるカケル。
正直言って、証拠だなんてどこにも無い。どれもルトやミランから聞かされた話ばかりで、証拠となる物を提示されたわけでもない。ただ筋も通っていたし、ルトやミランの人柄に触れていく内に、そんな嘘やデタラメを言うような奴じゃないと信用したからに他ならない。
試しにルトの方を振り返ってはみるが、無言で首を横に振られた。という事は、やはり決定的な証拠となる物などどこにもないのだ。
せめて最も決定打となりうる過去の大戦の証拠品を提示したい所ではあるが、如何せん初代魔王と初代勇者が激突してからもう何百年と経過している。形のある証拠なんて既に風化してしまっているだろう。
あるいは、フレイヤならば証拠となる物を所持──なんせ先代魔王の上、少なくとも百年近くは生きているのだから──しているかもしれないが、地下にいるフレイヤと連絡を取る手段がまるでない。フレイヤの所へ連れて行こうにも、どうせ罠だと警戒するに決まっている。
詰まるところ、現状、アレス達を十分に納得させるだけの証拠となる物が何一つとして無いのだ。
「ねえ君。ひょっとして君は魔王に騙されているんじゃないかい? 僕には態よく魔王に利用されているとしか思えないんだけどね」
「そ、そんな事ねぇよ! オレはただこの戦いを止めたいだけで──」
「なら、魔王と共謀して私達を騙くらかそうとしていると考えた方がしっくり来ますね。」
リタがカケルの反論を遮る形で冷淡な言葉を発する。
「信じて……くれないのか?」
「当然です。あなたの言葉を鵜呑みしたせいで魔族の凶行に拍車を掛ける結果に繋がってしまったら、私達の命だけでは済まない話になってしまいますから。」
「そうっスね。もしくは無駄に時間を引き延ばそうとしているようにしか思えないっスよ」
「僕も同意見だ。悪いけれど、やはりこのまま魔王を見過ごすわけにはいかないな」
「…………っ」
ぎりっと苛立ちを抑えるように歯噛みするカケル。互いに平行線ばかりで一つに交わる気配すらない。
だがしかし、それも無理からぬ話なのだろう。長年植え付けられた先入観を取り払うのは容易ではない。ましてそれが国家ぐるみとなれば推して知るべしだ。
他人と分かり合うのは難しい。人間同士でもこれなのだ──それが別種族ともなれば、言わずもがなだ。
こうして、同じ言語を介しているというのに。
「悪いけれど、邪魔をするというなら同族と言えど容赦はできないよ。僕らは生半可な気持ちでここまで来たわけじゃないんだ」
アレス達がいつでも攻撃に転ずれるように臨戦態勢に入る。アレスが一言掛ければ、すぐにでも強襲してくる事だろう。
実際、アレス達は躊躇いなくカケルを斬り捨てるだけの覚悟を持ち合わせているのだろう──彼らの強固な意志で染まった瞳が、それを雄弁に語っていた。
「カケル……」
背後から、ルトの不安げな声が届く。
しかしながら、カケルは一瞬たりとも振り返ろうとしなかった。今ここで隙を見せようものなら、それすなわちカケルの死を意味する。
アレス達は強い。一人一人はともかく、三位一体となった時の彼らは脅威に値するものがある。
だが──
「……すぅ、はぁ」
スッと剣先をアレスの顔面に向け、カケルは深呼吸を繰り返しながら精神を研ぎ澄ます。
できたら、同じ人間と戦いたくなどなかった。まして個人的な恨みすらない者となんて、どうしたって躊躇するに決まっている。本音を明かせばすぐにでも逃げ出したいくらいだ。
しかし、状況がそれを許さない。
今ここでカケルが逃げだせば、ルトの命はない。アレス達は間違いなく本気だ──きっとそこに容赦はない。正義の名の下に、ルトを断罪する事だろう。
その正義が、邪な奴らの手のひらに踊らされているものだとしても。
「────っ」
頬に汗が伝う。カケルの心情を表すように、剣先がぶれて目標が定まらない。
怖いのだ、アレス達との交戦が。殺し合いが。
よくマンガや小説で出てくる『殺す覚悟』だなんて、今まで人間と相対した事がないカケルにあるはずもなかった。
これが人間同士の血なまぐさい戦争が繰り広げられる世界だったならば、カケルの覚悟もまた変わっていたのかもしれない。が、生憎──と表していいかは微妙だが、人と命のやり取りをするかもしれないなんてこれが初めての経験だった。当たり前だ。この世界では魔物との戦いだけに集中していればよかったし、言うまでもなく日本にいた頃だって些細なケンカはあれど、平凡な日常を過ごしていたのだから。
殺し合いだなんてテレビの向こう側だけの世界だと思っていた。自分には無関係だと頭から切り離していた。
けれど、こうして殺伐とした状況に直面して。
他人を殺める事になるかもしれない場面に否が応でも立たされて。
カケルは、胸の奥からせり上がる背徳を感じずにはいられなかった。
怖い。たまらなく怖い。胃液がこみ上げて口の中が酸っぱい気がする。意識しないと四肢が恐怖で震えそうだ。
それでも。
それでもカケルは、アレス達と対峙する事を決めた。
戦わなければ、ルトの身が危ないというのなら。
ルトを守るためならば。
カケルは────
「誰だろうと、
それが火蓋を切る合図となった。
カケルの猛々しい宣言のすぐ後に、アレスとカンナが突撃してきたのだ。
一方のリタはと言うと──
「我は命じる。水の精よ、氷柱となりて、敵を貫け!」
詠唱に応えるかのように、リタの周囲から幾多の水玉が出現したかと思えば、文字通り氷柱と化してカケルに殺到してきた。
氷柱はアレスとカンナの横を絶妙にすり抜け、カケル目掛けて飛来する。魔法でカケルを牽制し、態勢を崩した後にアレスとカンナの二人で一気に畳み掛ける算段だろうか。
──いや、ちがう!
アレスとリタがカケルを捉える中、カンナだけがルトに集点を合わせていたのを見逃がさなかった。
このまま氷柱を全て叩き割るのは容易い。その間正面まで迫ってきているアレスもどうにか対応はできる。しかしながらカンナもとなるとさすがにきつい。どのみちルトの身に危険が迫っているとなれば安易に迎撃するわけにもいかない。
「魔王っ! 一旦離れるぞ!」
「えっ? ──きゃ!?」
カケルはへたり込んでいたままのルトの元へと疾駆し、有無を言わさず片手で抱き上げた。
そしてルトを小脇に抱えたまま、アレス達とは対角の方向へと駆け出す。
「っ。逃がしません!」
そのまま壁に追突するだけと思われた氷柱が、リタの思惟に導かれるようにカケルへと方向転換した。
「くそっ! 途中で方向を変えられるのかよ!」
追尾してくる氷柱に悪態を吐くカケル。これでは文字通りイタチごっこだ。スピードも存外早いし、このまま逃げ回った所でどのみち埒があかない。
「だったら!」
床を滑るように急ブレーキをかけ、飛翔してくる氷柱の雨と向き合う。
そして──
「はあっ!」
一閃。
気合いと共に放たれた横薙ぎの剣撃が、烈風を生んで氷柱を蹴散らしていく。
が、足を止めたという事は、当然アレスとカンナがそれだけ距離を詰めてくるという事に他ならず──
「遠慮なくいかせてもらうっスよ!」
先に間合いへと入って来たのは、カンナだった。
口上通りトンファーを振りかぶってきたカンナに、カケルはとっさに刃で受け止めた。
「まだあるっスよ!」
「──っ! しゃらくせえっ!」
続け様にもう片方のトンファーを使われる前にカンナに、カケルは剣でいなし、剣を翻してトンファーをすくい上げた。
「ちっ!」
胴ががら空きとなり危険を感じたのか、カンナは舌打ちを漏らして瞬時に後退した。
それを好機を見て、反撃を仕掛ける事なくカケルも距離を取る。
が──
「──カケル!」
「っ!?」
ルトの叫声に、カケルはハッと真横を向いた。
「覚悟っ!」
そこには、今にもミストルティンを振り抜こうとするアレスがすぐ目前まで迫っていた。
しまった。カンナに気を取られるあまり、アレスの姿を見失っていた!
まずい。脊髄反射で剣を横手に持とうとはするが、それより早くミストルティンがカケルの体へと到達してしまう。
せめてコイツだけでもと、ルトを後ろ手に回してミストルティンから守ろうとした──その瞬間。
ルトの手から、燃え盛る炎が放たれた。
「くっ──!」
たまらず、アレスが攻撃の手を休めて飛び退る。
まさか魔法を使ってくるとは思わなかったのだろう──アレスは面食らった様子でルトを凝視していた。
「カケル! 今の内に!」
アレス同様、驚きで目を瞬かせているカケルに、ルトが声を上げる。
「……え? お、おう!」
ルトに言われ、カケルは即座にその場から離脱する。
そうして即座にルトを抱えて走行しつつ、
「魔王! お前魔法が使えるようになったのか!?」
「……少しだけなら。カケルのおかげで休憩できたし、ちょっとだけ気分も良くなったみたいだ」
言われてみると、確かにほんの僅かだが血色が良くなっている。単純にアレス達を説得していたつもりだったのだが、図らずも魔法を使えるようになるぐらいには時間稼ぎになってくれたらしい。
だが未だ顔色は悪い。唇なんて以前として真っ青だし、やはりこの状態のルトを戦わせるわけにはいかない。満足に立てるどうかすらも怪しい。ルトだけでも逃がしてやりたい所だが、これではそうもいかなさそうだ。
だったら、このままルトを抱えたまま城外へと逃げるか。いやそれも現実的ではない。奴らとて逃しはしないだろうし、何より他の魔族と鉢合わせした時にどう説明したらいいかわからない。事情を話す前に賊の一味と判断されて襲撃されるのが関の山だろう。ともすると、魔族から見たら誘拐犯だと思われかねない状況だ。まことに不本意ながら。
だったらミランに匿ってもらうかとも考えたが、彼女が潜んでいるはずのドアへと視線を移してみるも、援軍を呼びに行ったのか、既に姿を消した後だった。
いやそもそもの話、ミランに武術が使えるだなんて聞いた事がないし、どのみちこの案は破綻していたのかもしれない。
そうなると──
「魔王、どれくらいなら魔法を使えるんだ!?」
「て、低級の魔法ぐらいなら何とか。けどそう何発も打てそうにない……」
「じゃあ魔法障壁は!? あれならどれくらい保てる!?」
「い、一時間くらいなら……」
「上出来だ!」
謁見の間の最奥──アレスからだいぶ距離を取った所で、カケルは足を止めてルトをゆっくり床に下ろした。
「お前はそこで魔法障壁を張ってろ。絶対中から出るなよ」
「か、カケルはっ? カケルはどうするんだ!?」
「オレはアイツらと戦う」
逡巡迷いなく断言するカケル。
今尚心は戦う事への恐怖で渦巻いているが、さりとて引くつもりもさらさらなかった。
「そ、そんな……。ダメだ! カケルだけでも今すぐ逃げて!」
「バカ。今更尻尾巻いて逃げれるか。それに──」
ギュッと柄を両手で握り締めて、こちらへと向かってくるアレス達を直視する。
「お前を置き去りにして自分だけ逃げるなんて、もう絶対にしたくない」
これは決意の言葉だ。
困難な道から目を背けて、保身ばかり考えていた卑劣な自分に対する決別の言葉だ。
もう二度と、ルトを悲しませるような真似はしない。
それは絶対に絶対だ。
必ずやルトを死守してみせる!
「カケル……」
ルトがカケルの裾を掴む。その手は小刻みに震えていて、ルトの不安が伝わってくるかのようだった。
「大丈夫だよ」
ルトの方を振り返って、カケルは言う。
泣きそうに瞳を揺らすルトを見つめながら、カケルはニッと活発な笑みを浮かべてこう先を継いだ。
「ちゃっちゃと終わらせて、すぐお前の所に戻ってくるから」
その言葉を最後に。
カケルはルトの手を振り切って、アレス達に向かって一気に駆け出した。
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