第272話 ドラフト会議

去年は小山先輩や大野先輩が大学進学すると決めていたし、そこまで真剣に見て無かったドラフト会議だけど、今年は本城さんの指名可能性が高く、部員全員でドラフト会議に注目する。ドラフト会議は全部地上波で生中継してくれるけど、始まるまでは今年の夏の甲子園のダイジェストが流れている。


大阪桐正と湘東学園の試合も当然取り上げられて、詩野ちゃんが突っ込み、それを優紀ちゃんが宥める。


「……大阪桐正を唯一苦しめた湘東学園って、そんなフレーズ使って良いの?」

「実際、延長戦までもつれ込んだのは湘東学園だけだし別に良いと思うよ?

あ!本城さんがホームランを打った場面だ!」

「甲子園の1回戦の初回に、私のスリーランと本城さんのツーランで大量得点を取った試合だっけ。……こうして見ると、本城さんのホームランって意外と多いね」

「カノンがホームランを打ち過ぎていて、陰に隠れているからじゃない?今の再放送で、どれだけカノンの名前が流れたのよ……」


甲子園の再放送が終わった後に始まったU-18W杯の再放送では、投手組の活躍ばかり取り上げられていたけど、大村さんや森友さんら大阪桐正勢に釣られて、本城さんのホームランシーンがこちらでも流れた。


思っていたより本城さんのホームラン数が多いなと口に出したら、真凡ちゃんに突っ込まれる。私のホームラン数が多すぎるせいで、本城さんのホームラン数が少ないという印象はあるかな。


本城さんの高校通算本塁打数46本は怪我の期間も考えたら十分に多いし、智賀ちゃんがまだ2年生の秋なのに58本もおかしいな。確か智賀ちゃんは春の選抜甲子園が始まるまで16本だったはずだから、そこから42本も打ったのか。


「……197本って何のバグですか」

「U-18W杯のアジア予選は稼ぎ時だったね。敬遠され辛かったし、良い経験にもなったよ」


そしてテレビで放送されてしまう私の通算本塁打数と歴代通算本塁打記録に久美ちゃんから突っ込みが入る。元歴代1位が109本だから、もう既に誰にも抜けない記録なんじゃないかな。まあ練習試合の本塁打も含んでいるし、そこまでこだわる必要のないランキングだと思う。


ドラフト会議は各球団の監督が指名する選手を選んで、1位だけは同時に公開をする。重複した場合はくじ引きで当たりを引いた球団が交渉権を獲得して、外れた球団は再度指名を行う。


「思っていたより、ばらけましたね。注目の3投手が、それぞれ競合はしましたが」

「まあ、どこの球団もくじを外したら痛手だってことは分かってるだろうし、撤退も戦略の1つだね。

そう言えば、久美ちゃんはどこのファンなの?」

「私はカノンさんと同じ、京神ジャガーズファンですよ。京都府民ですし、親も京神ファンなので」


今年はやっぱり芳田さんと藤波さんに集まるだろうなと思っていたら、案外被らない。大槻さんや森友さん、城西高校の白木さんへの入札もあって、最終的に芳田さんが4球団競合、藤波さんが3球団競合、大槻さんと森友さんが2球団競合だ。


最終的に芳田さんは千葉オリオンズ、藤波さんは京神ジャガーズ、大槻さんは北海道フライヤーズ、森友さんは埼玉西クラウンズで確定する。今年はドラ1が全員高校生に集まるって、大学や社会人に良い投手が居なかったのかな。


ドラフト1位のくじ引きで負けた球団は、大学や社会人で即戦力と呼ばれる人達を指名していく。その中で高校生を選んだのは、福岡ファルコンズ。U-18W杯でもスタメンで出場していた山梨学園の赤石さんを指名した。U-18W杯で一緒に戦った人達がドラフト1位で選ばれていくのを見ると、今年のU-18日本代表のレベルは高かったように思える。


1位指名が終わったところで、2位以降は最下位からウェーバー方式で指名していく。今年、2位を最初に指名するのは昨年2位から今年6位に転落した埼玉西クラウンズで、大阪桐正の大村さんを指名していた。大阪桐正から2人の強打者を取ったことになるクラウンズは、かなり良い結果のドラフトになるんじゃないかな。


スタンダードリーグの最下位が指名した後は、ジャパンリーグの最下位が指名する。今年もジャパンリーグの最下位は京神ジャガーズで、本城さんを指名した。


本城さんが、2位で指名された。しかも、かなり早いタイミングだ。


「2位だ!?京神も大砲は欲しがってたけど、2位で指名するの!?」

「これ、快挙ですよね。U-18W杯の成績が評価された原因だと思いますけど、凄いですよ」


思わず叫んでしまったけど、2位指名は快挙だと私も思う。久美ちゃんの言う通り、U-18W杯での好成績が2位指名の決め手かな。大村さんと、ほぼ同評価だったってことだね。


ドラフト会議の会場にいる本城さんがアップで映るけど、本人は涙を流して指名を受け入れている。横浜ベイスタアズや千葉オリオンズも2位指名だった可能性があるけど、指名順の都合で京神が取ったのかな。


その後も次々と有名所の選手や、プロが確実視されていた選手の指名が続く。だけど湘東学園は、湘東学園初のプロ野球選手の誕生に大いに盛り上がり続けた。

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