第273話 一夜明けて

ドラフト会議から一夜明けて、テレビでは今年のドラフト会議の結果を元プロ野球選手や元監督の評論家が評価をしていた。どこを見ても、球団別の評価で1位は埼玉西クラウンズだね。今放送している番組だと、クラウンズの点数が100点になっている。


森友さんと大村さんを一気に取ったのは、大きいだろうね。こういう番組の点数なんて、信憑性0だし将来的なことは全然分からないけど。


京神ジャガーズは1位に藤波さん、2位に本城さんを指名した後、守備自慢の大学生ドラフトに移行していた。まあ今年の京神ジャガーズ、ぶっちぎりでエラーが多かったからね。確かエラー数だと、リーグトップの2倍以上で断トツ最下位じゃなかったっけ。その結果、85点と付けられていた。これでまあまあ良い方の点数。


この番組では、東京ジャイアントが最下位で55点を付けられている。まあ森友さんのくじを外して、次の大学生ナンバー1投手のくじも外したから仕方ない。選手の平均年齢が高いのに、大学生や社会人の指名も多いし、補強ポイントは投手なのに捕手ばかり指名している。


今回のドラフトも、来年以降のプロ野球に影響を確実に与えるだろうし、今年の世代は特に影響が大きいんじゃないかな。新人王争いとかも、注目していきたいね。


……ちなみに今年の新人王は元横浜高校のエース松池さんが獲得していた。甲子園ではあまり活躍出来てなかったけど、最速も135キロから137キロになっているし、彼女と1年目の夏に対戦出来たのは良い経験になっていると思う。他の新人は、まだあまり1軍出場を果たしてないね。


「プロ入りおめでとうございます。ぶっちゃけ京神は1塁の層が薄いですし、1軍に早く上がれることを期待しています」

「内野陣は1.5軍未満の選手でスカッスカですからね。本城先輩が活躍してくれるのに期待です」

「ふ、2人とも京神ファンということは何となく分かっていたけど、辛辣過ぎないかな?まあとにかく、ドラフト2位で指名されたのは嬉しいし……1年だけだったけど、一緒に野球を出来て楽しかったよ」


私や久美ちゃんがお祝いの言葉を述べると、本城さんは少し照れくさそうにしながらもお礼を言って来た。奈織先輩と美織先輩は関西の大学への推薦を勝ち取ってるし、今年の3年生の進路も確定した。来年は、どうなるだろうね。


「……ところで、カノンが京神ジャガーズか北海道フライヤーズでほぼ確定してるって話は本当なの?京神は、カノンのポスティングにタイトル20個を条件にしてるって聞いたけど?」

「マジですよ。ついでに北海道フライヤーズも同条件です。他の球団だとポスティングの条件が4年以上かかりますが、タイトル20個なら最短2年で達成することが可能なので」


ついでに本城さんが私の指名する球団の噂を知ったっぽいので、肯定しておく。一応、全球団のスカウトとお偉いさんに会って話した結果、ポスティングの条件を最短で達成出来そうなのがこの2球団だった。タイトル20個なら、最短で2年だからね。


他の球団は基本的に4年以上かかる条件や、入団してから5年後とかを提示して来たから、この2球団以外の指名は断ると明言している。タイトル20個も相当ヤバい条件だけど、私の計算では3年以内に達成できるはずだと確信している。


「……いつ聞いても、呆れた条件ですよ。首位打者、本塁打王、打点王、盗塁王、MVPの打者五冠に加えて、新人王や日本シリーズMVP、最高出塁率やベストナインなどもタイトルに含みますから思っていたより早く達成できる条件ではあると思いますが、やっぱりおかしいです」

「あと、それに加えて投手側のタイトルの可能性もあるじゃん。だから1年に7個は達成できそうだし、1年に10個も難しくはないかなって」

「……まあ僕は、新人王目指して頑張るよ。カノン達も、甲子園春夏連覇を目指して頑張ってね」


久美ちゃんがずらずらとタイトルを並べてくれたけど、他にもゴールデングラブ賞や最多安打もタイトルなので20個はかなり楽な条件だと思う。日本のプロ野球界を舐めているつもりはないけど、これぐらいは達成しないとメジャーには通用しないんじゃないかな。


「ところで久美ちゃんは、何で私の条件について知っているのかな?」

「私も色んな球団のスカウトとお話していますが、カノンさんと一緒の球団じゃないと指名拒否しますとあらかじめ伝えてますので」

「もしも別の球団が指名したとして、指名拒否した後はどうするの?」

「ペナルティはあって無いようなものですし、カノンさんが告白を受け入れてくれるなら籍を入れて子育てに専念します。受け入れてくれなかった場合は……大学進学をしてスポーツ管理栄養士になってカノンさんを支えます」


本城さんと別れた後、とりあえず久美ちゃんが私の条件について何で知っているのか聞いてみると、久美ちゃん自身がスカウト達と話していたからだった。具体的な細かい条件まで知っていたことから、盗聴もしていたとは思うけど、これでも彼女は来年のドラフト上位指名候補です。


「待って。色々と待って」

「待ちますよ。でもカノンさんも、娘は早くに欲しいでしょう?早い方が親子対決とか、可能性ありますし」

「……それは否定できないし、卒業時に腹を括る算段ではあるけど、今は関東大会準決勝に目を向けようか」

「それは、遠回しなOKですか?

……今かなり、テンション上がったので準決勝が待ち遠しいですね」


関東大会の準決勝で先発を務める予定の久美ちゃんは、上機嫌で練習へと向かった。……あれ?今の私の言葉、OKって感じだった?

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