第145話 台湾代表

台湾の代表メンバーが日本に来て、親善試合を行なう。アジアの国々を世界ランク上位順に並べると、日本が9位、韓国が13位、中国が28位、マレーシアが45位、タイが51位で、台湾が67位。アジアだと6番目の強さの台湾は、どの世代でもアジア予選で躓いている。


……U-18W杯アジア予選はアジアを2つのグループに分け、それぞれのグループの上位2国ずつが本戦に進める。日本はほぼ確実に予選を勝ち抜ける力を持っているけど、台湾はそうではない。だからというわけじゃないけど、戦うために日本に来てくれる。


今日は、U-18日本代表としての初試合だ。これから投手陣は何人か追加で呼ばれるけど、野手陣に大きな変更は無いはず。特に野手のスタメンは、選手に大きな怪我でも無い限り変わらない。


先発の芳田さんは、今日も調子が良さそうだ。ランナーを出すと一気に心労が溜まるけど、後ろから見ていて気持ち良いぐらいに相手バッターを三振にしてくれる。



U-18日本代表 スターティングメンバー


1番 二塁手 赤石(山梨学園・3年)

2番 遊撃手 荻野(宝徳学園・2年)

3番 三塁手 内河(履陰社・3年)

4番 中堅手 実松(湘東学園・2年)

5番 右翼手 白木(城西高校・3年)

6番 左翼手 大村(大阪桐正・3年)

7番 一塁手 山村(履陰社・3年)

8番 捕手  大橋(和泉大川越・3年)

9番 投手  芳田(多久大光陵・3年)



スタメンは、何となくAチームの面影があるね。ピッチャーが芳田さんなので、キャッチャーは芳田さんのナックルを捕れている大橋さんが、ライトには城西高校の4番、白木さんが入る。白木さんは現時点で、高校通算本塁打がトップだったはず。


1回表の守備は、台湾代表の上位打線を芳田さんが三者連続三振で抑えたので出番無し。国際試合のボールに変わったことで苦労する人は多いけど、芳田さんはむしろナックルの変化が顕著になったから手を付けられなくなっている。


台湾代表の投手は台湾のエース、甄(チュン)柏青(ポォチン)さん。台湾最強左腕と呼ばれており、ストレートの最速は133キロ。先発でも基本130キロ以上のストレートを投げられるし、友理さん並みとは言わないけど高速スライダーが良い。後は、チェンジアップとカーブも投げられる。


たぶん日本に居ても騒がれるレベルで良い投手だから、日本の球団のスカウトの目に留まることも彼女の目標の1つかもしれない。彼女は初回、赤石さんをショートゴロに打ち取り、裕香ちゃんを外野フライに抑える。


「流石に、簡単にヒットを打つのは難しいレベルね。高速スライダー、結構曲がるわよ」

「国を背負う、代表のエースだからね。初回に打順、回るかな」


ベンチに戻る裕香ちゃんと軽く話した後、私はネクストバッターズサークルに入る。近くで見ると、ノビの良いストレートを投げているし、コントロールも悪くないね。スタミナが豊富という情報は入っているから、台湾で1番を貰うだけの投手ではある。


だけど、日本だと同じ左腕の浦田さんと代表入りを争うレベルだ。そう思っていると内河さんがセンター前へヒットを打ち、4番の私が打席に立つ。親善試合もそうだけど、国際試合で敬遠は少ないし、後ろにも凄いバッターが並んでいるからこの場面で敬遠は無い。


私と真っ向から勝負してくれる甄さんの球をよく見て、何回かファールで粘る。……微妙にストレートが、動いている感じかな。それなら高速スライダーの方が打ちやすいと思い、内に食い込む高速スライダーを待つ。


カウント2-2から6球目、決めに来た内角の高速スライダーを、私は引っ張る。木製バットでも金属バットでも、力があれば打球は飛ばせる。それは例え、根っこに当たった時でもだ。


ふらっと上がった打球はサードの頭を越え、外野後退守備だったこともあり、三塁線に落ちる。レフト線への、ツーベースヒットとなった。ツーアウトランナー2塁3塁の場面で、バッターボックスには調子の良い白木さん。調子が良いと言うよりは、木製バットへの適応率が高いというべきかな。


本城さんに聞いたことだけど、白木さんは得点圏打率も高いらしい。実際、選抜甲子園では打点も多かったし、広い甲子園で本塁打も打っている。そんな白木さんは、ライト前へヒットを打って日本代表は2点を先制。ツーアウトからでもスムーズに点を取ることが出来たし、このクリーンナップはヤバいね。


試合はその後も少しずつ日本が追加点を上げて行く形となり、私の第3打席はレフトへのツーランホームランとなる。試合は8対1で6回表に移り、左腕の浦田さんが中継ぎとしてマウンドに上がる。


芳田さんの欠点は、ランナーがノーアウトやワンナウトの場面で出ると、高確率で1点を許すことかな。パーフェクトピッチングが続くなら良いけど、ランナーが出ればそれはたちまち3塁へ行ってしまう。


それでも点を許さない時もあるから、芳田さんのナックルは異常だね。ちなみに今回の失点はランナー3塁にいる状態で大橋さんがパスボールをしたのが原因。


このナックルを受け止められるというだけでも、多久大光陵の正捕手は招集するべきだったんじゃないかと思う。……1試合に1回のパスボールなら、変わらないのかな?

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