第144話 代表メンバー

昨日と今日の試合の結果を考慮して、U-18日本代表メンバーが確定する。背番号順に呼ばれるわけだけど、1番は藤波さんのものになった。芳田さんがエースでも良いと思うけど、知名度を考慮してかな。タイプが真逆だし、どちらが明確に上とは言い切れない。


1番 藤波(投手/大阪桐正・3年)

2番 篠宮(捕手/宝徳学園・3年)

3番 山村(内野手/履陰社・3年)

4番 赤石(内野手/山梨学園・3年)

5番 内河(内野手/履陰社・3年)

6番 荻野(内野手/宝徳学園・2年)

7番 大村(外野手/大阪桐正・3年)

8番 実松(外野手/湘東学園・2年)

9番 白木(外野手/城西高校・3年)

10番 芳田(投手/多久大光陵・3年)

11番 大槻(投手/和泉大川越・3年)

12番 佐藤(投手/仙台育徳・3年)

13番 浦田(投手/履陰社・3年)

14番 大橋(捕手/和泉大川越・3年)

15番 森友(捕手/大阪桐正・3年)

16番 若浜(わかはま)(内野手/秀岳院・3年)

17番 本城(内野手/湘東学園・3年)

18番 小玉(こだま)(外野手/滋賀学院・3年)

19番 新居(外野手/広稜高校・3年)

20番 市橋(いちはし)(外野手/静岡市立北高校・3年)


本城さんの背番号は、17番。DHや代打での起用を見越しての選出と言ってたけど、本当に代表メンバーに残れて良かった。


「優紀ちゃんは、大丈夫なの?」

「病院に行ってレントゲンを撮って貰ったら、左肩甲骨棘下窩骨折って言われたそうだよ。全治1ヵ月で、夏大に間に合うかも怪しい」

「……僕も、本当に許せないんだけど、何か出来ない?」

「故意と決めつけるのも良くないことだけど、今回は故意でも故意じゃ無くても社会的な制裁を受けるから、わざわざ復讐をするまでも無いよ」


試合後、優紀ちゃんへのデッドボールを聞いてキレた本城さんは、たぶん私以上に怒っていたと思う。ただ、今回の件は世間の日の目を浴びたために、鎌倉学院の評判は地に落ちるどころか潜る勢いになっている。


……裏で久美ちゃんや七條さんが暗躍してそうだなぁ、と思いつつ、事件については出来る限り思い出さないようにする。既に鎌倉学院のエース江塚の住所は掲示板に晒されており、怒りの突撃をしようとした人間が、塀に赤いペンキで「殺人犯」と書かれていた様子をネット上にアップしていた。


自分よりヤバい人を見ると冷静になれるし、私は落ち着けて良かった。試合には勝てたし、優紀ちゃんの怪我も選手寿命を縮めるような怪我にならなくて一安心。あとは、なるようになるだろう。


代表メンバーが確定したことで、ここを去る人達に別れの挨拶をして、明日と明後日の台湾戦に向けてミーティングが始まる。台湾は世界ランク67位と、上位では無いけどそこそこの評価。日本が世界ランク9位だから、格下相手ではある。


「台湾とは(アジア予選で)当たらんから、全力でぶつかろうや」


岡沢監督は、1戦目の先発に芳田さんを、2戦目の先発に藤波さんを起用する予定だと伝える。大槻さんと浦田さんは、リリーフとして用意させる感じ。1戦目はDH無し、2戦目はDH有りだから、本城さんは2戦目でDH起用かな。


そして私は、抑えも兼任することになった。私は投手としても世界に通じると、岡沢監督は判断したのだと思う。期待には応えられるよう、頑張ろう。




夜になって、あらためて連絡を取る。今度はSNSのグループの方で、容態を聞いた。


カノン:優紀ちゃん本当に大丈夫なの?

西野:大丈夫大丈夫

西野:成長期だし3週間あれば治るって

しの:一月後には投げられるようになるって言ってた

真凡:……絶対に許したくない

カノン:怒って力むとフォームが崩れるよ。真凡ちゃんは2打席目からノーヒットじゃん

真凡:カノンは悔しくないの!?

カノン:とりあえず怒っている人はヤバい人を見て落ち着こう

カノン:【真っ赤なペンキで『死ね』『犯罪者』と塗りたくられた江塚家の塀】

久美:カノンさんが何でその画像を持っているのか問い詰めたいですが、ヤバいですね

久美:ちなみにこれ、江塚の家の塀です

ちか:怖いですね……

西野:あ、私はそんなに気にして無いから怒らなくても良いよ

真凡:……本人が何とも思って無いなら、私も何とも思わないようにするわ


2年生グループで優紀ちゃん自身に聞いてみると、優紀ちゃんのメンタル面は想像以上にタフだった。案外こういうのは、本人は何とも思っていないことも多い。私も最初は怒りで頭が埋め尽くされたけど、今はもう大丈夫だ。時間は全てを解決してくれる。


夜のニュースで早くも鎌倉学院の悪行について取り上げられていたので、鎌倉学院の命運も決まった。元々、神奈川の野球事情に詳しい人なら知っていた程度の悪名は全国に轟いたし、来年以降は入学者が激減するはず。


とにかく、エースと大砲2人が抜けた状態で4対3と逃げ切れたのは本当に良かった。聖ちゃんや光月ちゃんだけではなく、今日は中谷さんや熊川さんも出場し、中谷さんは代打で長打を打っている。1年生達の活躍もあって、勝てた試合だし、次の準決勝は統光学園との対決だから、気持ちは切り替えて行こう。

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