第2話 新婚家庭に姑が毎週来る

 姑は新婚の息子(マザコン野郎)の家に毎週土曜日、必ず顔を出したがった。結婚前からの習慣で、自宅で介護している親の世話に疲れて避難しに来ているのだと主張していた。

 マザコン野郎は仕事で不在である。合鍵を使って勝手に入り、リビングで自由きままに茶をしばいていたそうだ。そして、そんなことを知らない私が嫁いできた。

 姑は私に合鍵を渡し、何の疑問もためらいも持たず、引き続き毎週訪れた。私に話し相手になってもらおうとしたのだ。

 引っ越してからの私はめちゃくちゃに忙しかったのでバチクソに迷惑だった。

 マザコン野郎は長年一人暮らしをしていながら洗濯カゴやドライヤーといった生活必需品を買っていなかったし、冷蔵庫の中は正真正銘の空っぽだった。

 毎日のように買い物に行かなければ不便すぎて生活が成り立たない中、姑の相手まで強いられるのはストレス負荷実験でしかない。

 それでも当時は仕方なく出迎えて、どうでもいい話を何時間も聴いた。

 マザコン野郎のご家庭は「自分たちのことを知ってほしいからテレビは点けないで! テレビを点けながら番組内容について話すのは血の繋がった身内くらい!」という独自の価値観を持っていたため、姑の半生や姑の母の半生やマザコン野郎の兄弟についての身内トークをダラダラと話していた。

 私が就職活動など近況を話すターンも一応設けられてはいたが、姑は話半分にしか聞いておらず身内トークの展開にやたらと熱心であった。

 新婚ということもあり将来的な子供に関する話題を出した時、姑は

「自分が新婚の頃は結婚した翌月には妊娠していた」

 と自慢げに語った。

 おたくの息子のマザコン野郎は結婚後、行為どころかキスもハグも一つもしてきませんよと返しておいたら無言を通され、すぐに別の身内トークに切り替えられた。

 都合の悪いところは無視する。

 これがマザコン野郎一族の共通項であった。

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