第6話 クロアとクラリオン
「みなさん困惑もあると思いますので、これから30分休憩を挟みます。私は教室にいますので、個別に相談に来ていただいて構いませんよ」
ヨレン先生の言葉で一旦休憩となった。どうしよう、オレンに声をかけるべきなのかどうか迷っていると泣き声と一緒にクロアが突進してきた。
「リリアンナ! どうしよう。こんなの聞いてないよぉ」
「もちろん私も聞いてないよ。とりあえず枯渇を起こさないように技術を磨けばいいから考えるのは辞めよう」
自分で自分に言い聞かせるようにクロアの手を握り締める。クロアの暖かい魔力を感じる。
すると横から手が伸びてきて、触れない絶妙な位置でクロアの手を制すクラリオンがいた。
「クロアの手は僕の手だからね。気安く触らないでね」
「クラリオン、ちょっと意味が……」
さすがのクロアもドン引きしたのか、自分の手を後ろに組んで防御している。
私ももちろんドン引きだ。
「クロアが僕のところに来るのはわかってるからね。卒業してからのプランもちゃんと考えているから安心して。あ、ちゃんとクロアの気持ちを優先して、さすがの僕もまだ手は出さないからね」
「私には全く理解できません。私のクロアに少しでも触れたら許さないから」
「リリアンナ嬢に許可を得なくても、そう時間の立たないうちにクロアから許可を貰えるから」
ぐいぐい攻めるクラリオンは、妄想癖が凄いのかクロアに好意を持ってもらえること前提で話している。
「そもそもクラリオンの、その、こ、好意がないとお互い触れないじゃない」
「僕の行為? そんなの昔から決まってるよ。クロアのことは――」
「ちょっと待て。クロア嬢が泣きそうだ」
オレンが話に入ってきて会話を止めて、クロアの表情を見る。
クロアは真っ赤になっていて、話しについていけてないのか泣きそうに眉根を寄せている。
「ごめんね。困らせるつもりはなかったんだ。この先はまだ言わないでおくね」
もうほとんど告白をしているようなものなのに、クラリオンは反省の意思もなく、また愛しい目でクロアを見つめているので私が口を出すべきではないと判断して話を辞める。
「それで? オレンは言うことないの?」
「絶対お前のことだから聞くと思った。羞恥心というものがないのか」
「全くないね。オレンだって早く言いなよ。君のことが」
「ストップ。人のことに口を出すな。とりあえず席に戻れ」
「はーい。いい結果になるのを楽しみにしております」
オレンが返事をする前に、クロアに謝罪をしながら席に戻っていった。
オレンは緊張した様子で、私はなにも発せられず微妙な空気になっている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます