第5話 魔力枯渇の大事なこと

 「みなさんは魔力枯渇についてはご存じですよね?」


 魔力枯渇とは数週間は魔力を使えないほど魔力を使ってしまうことだ。魔力枯渇期間が長いと、最悪の場合魔力を失ってしまう。

 そのため魔力検査の際に自分の数値を図り、大体の魔力の量を調べ、枯渇しないように学ぶのだ。


「魔力枯渇を起こした際、すぐに回復する方法があります。魔力の波動があう同士で、肌を密着させることです。最低でも手を繋ぐ。それでも治らない場合はキスをしたり体液交換になります」


 ぴしりとクラスの空気が固まった。私の脳にはお父様がお母様に密着ハグをしている光景が浮かび上がっていた。


 「詳しく説明しますと、対になるペアの魔術師で片方が魔力枯渇を起こした際に行います。ペアは必ず異性です。魔術の波動があう同士でないと、魔力爆発といってお互い魔力枯渇を起こす可能性が高いため、安易に触れてはいけないのです。そのため魔術の波動があう同士を入学試験で解析しています」


 話される内容が恥ずかしくて助けを求めるようにクロアのほうを見ると、クロアは林檎のように真っ赤になっていた。

 たぶん私もそれくらい真っ赤になっていると思う。


「お互い触れて魔力を回復することを魔力共鳴と言います。これは大事なことなのでじっくり説明します」


 ヨレン先生は黒板に魔力のパーセンテージを上から順に書いていき、その横に解決方を書いていく。

 ヨレン先生を見ることすら恥ずかしくなってしまったが、これをしっかり学ばないと今後魔力を失うことになる。


「上から順に魔力が50%ほどになった場合は手を繋ぐ、40%ほどでハグをする。そういった日常的な触れ合いで大丈夫です。魔力が30%ほどになった場合は体液を交換しなければなりません」


 クラス中に気まずい雰囲気が流れており、女子生徒は顔を下げて全員真っ赤になっている。


 もちろん、魔力枯渇を起こさないのがベストです。と言ってヨレン先生の魔力共鳴の説明は終わった。


「またそもそも魔力が膨大であったりする場合は、回復が早いのでほとんど魔力交換は必要ありません。僕は自分の魔力量をしっかり把握しているので枯渇を起こしたことがありません。ご自分のベストな状態を目指すためにも3年間きっちり技術授業をしっかり行います。こんなところですが、質問はありますでしょうか?」

「先生。説明が足りていない部分があると思います。そもそも魔力共鳴はいくら魔力の波動があっていようと、好意を持っていないとできないはずですよね?」

「ああ、忘れていました。魔力共鳴はお互いに少しでも好意を抱いていないと発動しません。こればかりは見えないものなのでどうしようもありません」


 このシーンとした空気の中で、元気に手を挙げたクラリオンはメンタルお化けなのか。


「ちなみに魔力爆発を起こさないためにも、いまの座席は魔力の波動があう生徒と隣の席になっています」


 私は驚いて右を向いた。もちろんそこにはオレンの姿。

 第三王子に好意を抱くなんて、とんでもない。それに魔力交換なんて恥ずかしくて絶対できない!

 絶対魔力枯渇がなくてすむよう授業を頑張って、ヨレン先生みたいに魔力交換をしなくてすむよう頑張ろう。そう心に決めた。

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