第4話 担当教師
「揃ったかな? ヨレンだ。まだ講師としては未熟だが精進していくのでみなさん宜しくお願いします」
静かだったクラスが一気に騒がしくなる。それもそうだ。
ヨレン先生は国立魔術師の中でもトップクラス。なのになぜかこの学園の教師として、去年から特別講師として勤めている。
お父様の上司だから、ヨレン先生とも仲が良い。
国家魔術師の1位という強さに、22歳という若さ。オレンを柔らかく温厚にしたような容姿。実はヨレン先生はオレンの従兄だが、王族の地位を蹴って国立魔術師をしている。
「まず自己紹介をしていこう。まず僕から。みなさんの知ってる通り国家魔術師兼講師をしている。得意な魔術は治癒と特性問わず魔物への攻撃防御だ」
2種類魔物に対しての魔術がある。
1つは攻撃型魔術。その名の通り魔物を攻撃し殺める。その代わり防御魔術には弱い。
もう1つは防御型魔術。これも名の通り、攻撃型魔術師が応戦する際に結界を張り、防御に徹する。大体防御に特化している者は治癒魔術も得意だ。
また魔物にも特性があり、植物型と動物型がいる。これは生まれ持った魔力の特性によって向き不向きがある。
ヨレン先生は怪我を一瞬で治すほどの治癒力を持っており、植物型も動物型問わず攻撃も防御もできる。
国立魔術師は強さによって上下関係が変わるため、お父様の上司に当たる。
「それでは、次は各自宜しく」
座席順に挨拶をしていく。クラスの人数は10人で男子生徒と女子生徒が半々。
「クロアと申します。得意な魔術は植物型防御で治癒魔法が得意です」
クロアは守ってあげたい見た目そのもの。防御型である。特に治癒の能力は高く、入学試験のための訓練の際に良く傷を治して貰った。
そういえば、入学試験の訓練のとき遠くから誰か見ていたような……。確か、金髪で……。
「クラリオンです。得意な魔術は植物型攻撃。将来の夢は国家魔術師補佐です」
クラリオンの発言にクラスがざわつく。
国家魔術師補佐は魔力の弱い者がなる職業で、専属国家魔術師の後ろから魔力を注ぐ役割をしている。
この国で最初から補佐を目指す者は少ない。戦場に赴き魔力だけを消費する。とても割にあわない仕事だが、しかも給料も安く、退職者がとても多い職業ナンバーワン。
補佐よりも魔術師として魔具を作ったり、民間の事業に勤めたりするほうが給料もいいため、そちらを目指すほうが主流である。
偶然隣の席になったオレンがため息をついている。ヨレン先生も呆れたような顔でクラリオンを見ているが、当の本人はただニコニコしているだけ。
本当に何を考えているのか、さっぱりわからない。わかることは、クロアに視線を送り続けていること。
「オレンだ。得意な魔術は主に特性関係ない攻撃と、まぁ防御も少しできる」
これは嘘。オレンを魔術をずっと見てきたが、ヨレン先生を弱くしたといっても過言でないほど、攻撃も防御も均等にできる。
だが嫉妬を買いたくないのか、いつも嘘をついている。
「リリアンナと申します。得意な魔術は動物型攻撃です」
ぺこりと頭を下げるとヨレン先生と目が合った。なぜか先ほどのクラリオンの自己紹介が終わったときのような呆れた顔――というより可哀そうなという表情をしている。
何か自己紹介を失敗したかと考えても、みんなと同じようなことしか言っていない。不安でオレンを見つめると大丈夫と口だけを動かして肯定してくれた。
「みなさん、自己紹介ありがとうございました。同じ魔術は今後練習が一緒になる予定なので覚えておくようにしてください。それでは最初の授業になります。なぜ魔力のある男女が触れ合ってはいけないのか。これは初歩的でもありますが、とても重要なことですので、絶対に覚えてください」
全員が頷いたのを確認して、ヨレン先生は言葉を繋ぐ。
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