第3話 学年1位

「あれって」


 その髪色には心当たりがあった。しかしあの人がこの学園にいるはずがない。

 しかし、その青い髪の人物は私たちのほうに向かってきている。


「退け」


 渦中から低い声が聞こえ、ビクッと反応した周りの女子生徒が道を開けた。

 そこから出てきたのはガッシリとした体格と、一目を引く美形が突然現れた。


「オレン!? なんであなたがここに……」

「リリアンナ! やっと会えた。実はこの学園に興味があったんだ。クラスも同じみたいだから、宜しく」

「そうなのね。一緒に学べるなんて嬉しいわ」


 気軽にオレンと呼んでいるが、オレンはこの国の第三王子。

 この国では王子や王女の絵姿などは出回っておらず、本人たちも身分を隠して行動しているため、存在を知っている者は少ない。

 しかしオレンは幼い頃に私のお父様の魔術に憧れたらしく、6歳の頃からよく私の家を訪れていたため、身分の差があるにも関わらず私はオレンのことを知っていた。


「おや、お久しぶりです」


 クラリオンは貴族ではないはずだが、オレンと親しげに話している。対してクロアは当然ながらオレンを知らないため普通のクラスメイトにするように「初めまして」とだけ挨拶をしている。

 ちなみにオレンからはクラリオンが壁となっていてクロアは少ししか見えない。


「クラリオン、気持ち悪い挨拶をするな。鳥肌が立つ」

「あはは。初日だからしっかりしないとと思って。それとおめでとう」

「ん? ああ、無事入学できて良かった」

「違うよ。クラスのことだよ」

「クラリオン、もういい。口を開くな」


 クラリオンの説明によると2人は入学前、何かがきっかけで仲良くなったらしい。

 その経緯を話そうとするたびにオレンが睨みつけている。


「ふふ。あと学年1位って君のことだろ?」

「ああ。そうみたいだ」

「あら、オレンったら凄い! 昔からお父様に素質があるって言われてましたものね」


 まさかの学年1位がオレンだったとは。

 確かにオレンの魔力はお父様も舌を巻いていた。

 

「ねぇ、早くクラス表を見に行かなくていいの?」

「いつのまに! もうみんないなくなってる」


 周りを見るとクラス表はみんな見終わったのか各自クラスに向かっていた。

 表が張り出された場所に向かっている最中も、女子生徒はちらちらオレンを見ている。

 涼し気な瞳に高い鼻。薄い唇の横には黒子があり、それが堪らないらしいが、昔から見慣れているせいか私は綺麗な顔だなと思うくらいで騒いだりはしない。

 

「どうやら、僕たち全員同じくらすみたいだね」


 いつの間にやらクラリオンが表を確認してくれたみたいだ。

 

「よかったね。クロア、Aクラスだ」

「まあ! 私もAクラスなの!? 見間違いではなく?」

「僕が名前を見間違えるはずないよ」

「そうね。嬉しいわ!」


 クロアがこちらに駆けてきたのでハグでもしようと手を広げていたのに、またもや壁になっている人物に阻止される。

 

「さあ。早く教室に行こうか」


 クラリオンはクロアをエスコートして先に行ってしまった。


「クラリオンのやつはまた余計なことを……。クロア、俺たちも行こうか?」

「ええ」


 こうして夢に見ていた学園生活が始まった。

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