第2話 クラスメイト

「諸君、入学おめでとう。優秀な者ばかりで今回は国家魔術師になれるものが何人輩出されるか楽しみだ」


 白髭を撫でながら、校長先生が挨拶を終え壇上を後にした。あれから6年経って私はやっと学園へ入学できる16歳になった。


「クロエよ。これから宜しくね」


 校長先生の話が終わりすぐに話しかけてきたのは隣にいた小柄で小動物のような女の子。

 栗色の髪は緩くウェーブしていて、大きな瞳はキラキラと黄金色に輝いていて、絵画から出てきたように美しい。


「私はリリアンナ。こちらこそ宜しくね」


 早速仲良くできそうな子がいて安心した。


「このあとはクラス決めだよね。どのクラスになるのかな」


 今日入学した学園――サナバナ学園は国で2番目に大きく、国家魔術師になるための学校である。

 1クラスは10人ほどで3クラスあり、成績順にわかれている。

 

「Sクラスがいいけど、どうだろう……」


 Sクラスは成績が一番良い生徒のみ入れるクラスで、次いでAクラス、Fクラスとなる。


「リリアンナの魔力測定はいくつだったの? 私は6点だったから頑張ってAクラス……、それかFクラスかな」

「私は9点。でも魔力が高いのみで治癒とか、そういう補助魔法は苦手なんだ」

「私は逆で補助魔法は得意なの。でも魔力が弱くて」


 少し俯いたクロアは小動物のようで、守ってあげたい気持ちが大きくなる。

 得意分野が違うのなら国家魔術師になったら、お互いを補えるパートナーになれるかもしれない。


「クロアの傍にはずっと僕がやるから安心して。クロアが危険にならないようにいつでも傍にいるから」

「えっ、どちら様ですか?」


 背は180㎝に届かないくらいの男性が、クロアを守るようにいつの間にか立っていた。

 気配は全くなく、最初からそこにいたかのように振る舞っている。

 なに、この変質者。

 クロアを守るため一歩前に足を出すと、クロアがハッとして顔を上げ私を止めた。


「ちょっと、クラリオン。いきなりその発言はリリアンナに失礼よ。それにまず挨拶をなさい」

「ついクロアを見つけて声をかけてしまったよ。リリアンナ嬢と言ったかな? クロアの幼馴染のクラリオンです。以後お見知りおきを」


 この国で魔力があるものは学園を卒業するまで、握手でさえしてはいけないという決まりがある。そのためお互い軽く頭を下げるだけの略式の挨拶を交わす。


「ごめんなさいね。クラリオンたらいつもこうで……悪い人ではないのよ」

「へ、へえ。そうなの」

 

 悪人には見えないけれど、なんだか私を敵視するように見ている。ニコニコとほほ笑む目元は笑っていないように感じる。


「クラリオン、退いてよ。あなたが前にいるとリリアンナと会話ができないじゃない」

「はは、ごめんね」


 注意されても全く退く気のないクラリオンは、姫を守る騎士のように私とクロアの間に壁を作っている。

 ちなみに挨拶をされたとき以外こっちを見ていない。


「そういえば魔力検査10点を叩き出した大物がクラスメイトにいるらしいね」

「そう! 私もその噂を聞いて会ってみたいと思ったの。どんな方なんでしょう」

「クロアは知らなくていいと思うよ。そんなことより早くクラス表を見に行こう」


 クラリオンは自分から話題を振っておいて勝手に終わらせると、足早に講堂を出ていこうとクロアを促す。

 しかし私たちの行く先を邪魔するように人だかりができており、その真ん中あたりから頭ひとつ背の高い、青い髪だけが見えた。

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