魔力の使い方には注意しましょう
宇野田莉子
第1話 国家魔術師
「お父様、お父様! 今の演目素敵でした。子供向けに最適ですね!」
「子供向けってリリアンナもまだ子供だろ。でも気に入ってくれたようでなによりだ」
「私はもう10歳。子供扱いしないでください」
お父様が嬉しそうに笑い、頭を撫でてくれる。お父様の手は大きくて暖かくて、ホッとするけど子供扱いされるのが嫌で手を払いのける。
我が国、ナタリア王国は世界の中でも2番目に大きい国であり、国家魔術師という職業がある。
魔物と戦ったり、治癒をしたり、結界を張ったりと様々な魔術があり所謂エリート職業だ。
「私はお父様が誇りですわ」
お父様は国に数十人しかいない国家魔術師であり、その中でも魔力が強く、国の結界を張る一員なのだ。順位は落ちてしまったものの、お母様と結婚したときは、国でトップを争う国家魔術師であり、今もお父様に憧れる人は多い。その証拠に毎週のようにお父様の指導を受けるために、国から様々な魔術師が集まってくる。そのなかには王族がいたこともある。
お母様も元国家魔術師であり第一線で活躍していた。父との結婚を境に第一線を退いたが、いまは時間があると後輩の指導に当たっている。
国家魔術師はなりたい職業ナンバーワンで、もちろん私もそのひとり。
私もお父様やお母様のようになりたくて、物心ついたときから国家魔術師を目指そうとしているのだがお父様に常に反対されている。
「やはり私も国家魔術師になりたいです!」
「リリアンナ。国家魔術師は危険がいっぱいだからお父様は反対だよ」
「大丈夫ですわ! この前の魔力検査でも魔力量には問題ありませんでした。なぜお父様はそんなに反対するのです?」
「いや……それは、その……」
「お父様はいつも濁してばかり。6年後には学園試験もあるので私は受けるつもりです」
「それは辞めよう。お父様がリリアンナに似合う職業を探してくるから」
「他の職業で惹かれるものはありません。どうしてもダメだといって入学させてくれないのなら、この前見たお母様との濃厚なハグシーンをここで再現しましょうか? 最近は魔術で人型も作れるようになったので、再現は上手くいくと思います」
「それはダメだ。絶対ダメだ」
ハグシーンというのは3か月前に見た両親の密着度の高いハグだ。お互い融合するかのような隙間のないハグだった。
両親のハグシーンを偶然目にしてしまって以来、お父様はこの調子で国家魔術師を反対している。
「ではお父様。こうしませんか? 来月にある魔力測定で10点中8点を記録したら学園に入学させてください」
「8点……、リリアンナなら……」
「もしこれでも納得いただけないようであれば、私は結婚を申し込まれている方と婚約し、成人した18歳の頃に家を出ます」
「リリアンナが嫁に!? ダメだ。まだ早い!」
「お父様、ご決断を」
「くっ、8点ではなく9点を取ったら入学を許可しよう。そのときはすぐに嫁にいかないでくれ」
「わかりましたわ、お父様。今の発言はこの魔具に記録しましたから。撤回はなしですよ」
「いつのまに……!?」
私は勝ったとばかりに音声記録魔具をポケットに入れ、頭を抱えるお父様にニヤリと笑いかけた。
そして1か月後、見事に魔力測定で9点を叩き出し私は学園への入学許可を貰ったのだった。
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