俺の職業は『観光客』だが魔王くらいなら余裕で討伐できると思ってる〜やり込んだゲームの世界にクラスごと転移したが、目覚めたジョブが最弱職だったので追放された件〜
第44話 観光客、火の精霊と契約させられてしまう
第44話 観光客、火の精霊と契約させられてしまう
精霊の間へ足を踏み入れると、一面に炎が燃え盛っていた。
「ひいぃっ……!」
足を踏み入れた途端、ディーネは悲鳴を上げて俺の腕にすがりついて来る。
「お、恐ろしい魔力を感じますぅ……!」
どうやら化身にとって、精霊そのものの魔力に満ちたこの空間は刺激が強すぎるようだ。やれやれ、ここへ入ることを提案したのはディーネなんだがな。
「さてと、火の精霊はどこだ?」
俺は気を取り直し、どこかに居るであろう精霊を探して周囲を見回す。
「――遅い!」
すると、その声は上の方から聞こえてきた。
「助けるのが遅すぎるのですよ人間!」
調子に乗った言葉と共に、上の方から降ってくるそれ。
「私はサラマンダー様に生み出された化身のサラなのです! お前と契約を結んでやるために姿を見せてやったのですよ!」
気付くと、俺の目の前にはトカゲの尻尾のようなものと大きな角を生やした赤い髪の少女――火の精霊の化身『サラ』が立っていた。
「まさかいきなり化身の方が出て来るとは思わなかったぞ。火の精霊はどうした?」
「サラマンダー様は恥ずかしがり屋でひきもることが大好きなので、人間の前には姿なんか現さないのですよ!」
「…………そうか」
火のイメージとはおよそ対極の性格だな。一度リセットして厳選し直した方がいいんじゃないか?
「さあ、ごちゃごちゃ言ってないで今すぐサラマンダー様にひれ伏すが良いのです! そしたら、私がお前を足でグリグリと踏みつけてやるのですよ!」
「………………」
「それで精霊契約成立なのです!」
なるほど、今度はそういうタイプか。ウンディーネと同じくらい厄介そうな奴だな。
「どうして黙っているのです? サラマンダー様の領域に踏み込んでおいて呼びかけに答えないだなんて、無礼にもほどがあるのですよ!」
「よし、帰るぞディーネ」
俺は一秒くらい悩んだ末、ディーネを連れてダンジョンを後にすることに決めた。
「えぇ……? は、はいぃ……」
尻尾でべちべちと床を叩きながら自信満々に胸を張っているサラに背を向け、精霊の間から立ち去ろうとする俺とディーネ。
「なっ!? ここまで来ておいて無視しないで欲しいのですっ!」
しかし、例のごとく回り込まれてしまった。
というか、前にもこんな風に無理やり契約させられた覚えがあるぞ。
俺がそう思ってディーネの方へちらりと目を遣ると、ヤツは「もうっ……しつこいお方ですねぇ……」と小声で呟いていた。一体どの口が言っているんだ?
「お前はずぅーっと独りでファイアドレイクに魔力を吸われて助けを待っていたサラマンダー様が可哀そうだとは思わないのですかっ?!」
「いや、特に思わないな」
「せめて話くらいは聞いていくべきなのですよ!」
「それは面倒だ。お前を見ていてそう思った」
「こっ、この不届き者がぁっ! だったら私が満足するまでお前をお仕置きしてやるのですッ!」
サラは顔を真っ赤にしてそう言うと、俺に向かって火の玉を吐き出してきた。
「フレイムブレスッ!」
「おっと」
「いやあああああああああああっ!」
俺がとっさに回避すると、何故かディーネに直撃する。
「だ、大丈夫か……?」
「はぁ、はぁ……悪くないと……思いますぅっ……!」
どうやら手遅れのようだ。
「マシロ様に攻撃するのであれば……例えサラマンダーの化身であっても許しません……!」
ディーネは煙をまとったままふらふらと起き上がり、サラの前に立ちはだかった。
「ふん! だったら徹底的に痛めつけてやるのです!」
「私は……絶対に屈しませんよぉ……!」
「おりゃっ! とうっ! やあっ!」
「あっ、だめぇっ! きゃあっ!」
……もうこいつらだけでよろしくやってくれた方が全て丸く収まるのではないだろうか。
「こいつ……痛がってる割になかなかしぶといのです……!」
「はぁ、はぁ……マシロ様の愛に比べれば……あなたの攻撃なんて大したことありません……!」
「誤解を招くような発言は慎め」
――その後、二人は激しい戦闘の末にまとめて消滅した。
「……やれやれ」
呆れ果てた俺は、そそくさと精霊の間を後にする。
そして、知らぬ間にサラマンダーと契約を結ばされていたことに気づいたのは、それからすぐ後であった。
もはや呪いじみているな。
*ステータス*
【サラ】
種族:精霊の化身 性別:女 職業:マシロの眷属
Lv.15
HP:165/165 MP:95/95
腕力:45 耐久:30 知力:15 精神:20 器用:12
スキル:火の加護、聖なる火、料理
魔法:フレイムブレス、エクスプロード
耐性:冷気耐性
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます