第43話 クラスメイト死亡シーン集①


 オイラの名前は家入いえいり門太もんた


 ごく普通の高校生やってたんだけど、ある時突然クラス丸ごと異世界に転移させられちまったらしいんだ。


 異世界の王様が言うには、呼び出されたオイラたち一年B組(※ただしカス雑魚のマシロっちを除く)には、もンのすげー力が与えられているから、その力で国に巣食う魔王を倒して欲しいんだとよ。


 ……なるほどねぇ。


 オイラはゲームとかもよくやるから、それで大体のことは察しがついちまった。


 要するに、適当に魔物を倒して、経験値とお金を貯めまくってメチャクチャ強くなってから魔王サマとやらを叩き潰せば良いってことだろ? 


 学級委員長のアツトはいきなりラストダンジョンに挑んで死んだらしいけど、オイラはそんなヘマしない。さっさと魔王をやっつけて日本に帰ってやんぜ! 


 モンタ様の異世界俺つえええええ無双の始まりだな!




 ……ってなワケで、オイラはなんやかんやで王都を飛び出して、クソ弱そうなモンスターしかうろついてないダンジョンでレベル上げを始めたのだ!


「……ン? なんだあれ? めっちゃ色ンなアイテム落ちてんじゃんよォ!」


 その道中でやたらとアイテムが散らばっている大広間を見つけちまった。やはりモンタ様は持ってる男だぜ……!

 

 オイラの職業は魔法が使えない剣聖ソードマスターだから、なるたけアイテムを集めておきたい。


 ここに落ちてるモンは全部独り占めだ! 


 オイラはニヤリと笑いこう言った。


「へッ、誰ともパーティを組んでなくて良かったぜ!」


 天才的な頭脳を持つオイラは、こうなることを見越して誰ともパーティを組んでいなかったのだ! 


 ――それに、万が一マシロみたいな足手まといが加わっちまうとオイラ自身の命まで危ねえからな。


 まずは単独でレベル上げして、それなりに日が経って無能が淘汰されてから――生き残ってる奴らと組む。


 我ながら冴え渡った戦略だな! 流石はモンタ様! 惚れ惚れするぜ!


「さてと。ンじゃあ、早速アイテム集めっか!」


 オイラは嬉々として大広間へと足を踏み入れた。


「………………は?」


 ――だがその瞬間。


「グシャアアアアアアアアアッ!」

「ギャギャギャギャッ!」

「カタカタカタカタッ!」


 突如として、大広間全体を満たすほどの魔物が上から降ってきた!


「う、うわあああああああああああッ!? ごふッ! ガハぁあああああッ!」


 無数の魔物達に囲まれ、なす術もなく袋叩きにされるオイラ。


 ワームに右腕を食い破られ、スケルトンの短剣で腹を突き刺され、ゴブリンに棍棒で頭を叩きつけられる。


「ぐぅッ! あがぁッ! うげええええええッ! ごぱぁッ! ごぼごぼッ!」


 全身に激痛が走り、何が起こっているのか把握しきれないまま、オイラは血を吐き出して死んだ。


 モンタ様の異世界俺つえええええ無双、完。



 *



 僕は大黒おおぐろひねる。与えられた職業ジョブ魔法戦士マジックファイターだ。


 ――そして、この場所がおそらく『エルクエ』の世界であることを理解している。


 といっても、動画勢だからエルクエ自体は遊んだことがないけど……似たようなタイプのゲームは何度かプレイした経験がある。


 要するに、僕にかかれば魔王だって余裕で攻略できるということだ。


 マシロのような使えない無能のゴミクズとは違うのである。



 ……という訳で、まずは肩慣らしとして王都の近くにある低レベルダンジョンに挑んでいる。


 魔物相手にも問題なく勝利することが出来たので、思っていたより楽にやっていけそうだ。


「おっと……?」


 上機嫌で攻略を進めていると、足元に何かが落ちているのを発見した。


「これは……確か魔法の杖だったかな」


 僕はそんなことを呟きながら、魔法の杖を手に取ってみる。


「……ふーん」


 魔法戦士は全てのステータスがそれなりに伸びる反面、器用貧乏になってしまいやすい職業だ。手数で攻められるよう、攻撃手段が多いに越したことはない。……と動画で見た。


 そのため、魔法の杖は出来るだけ確保しておきたい。


「ひとまずこの杖にストックされている魔法を確認しないといけないな」


 鑑定スキルは持ってないし、とりあえず一回だけ振ってみるか。


 僕はそう呟いて、試しに魔法の杖を振ってみた。


 すると、目の前に真っ黒な球体が出現する。


「…………これは?」


 僕が疑問に思っていると、その球体はもの凄い勢いで全てを引き寄せ始めた。


「――――しまったッ!」


 それが危険な「ブラックホールの杖」だったと気付いた時にはもう遅く、僕の身体は脱出不可能な力で球体の中心へ引っ張られる。


「うがあああああああああッ!」


 ――ゴリッ、バキッ、グシャグシャグシャッ!


 ブラックホールの中へ入ってしまった部分から徐々に身体が潰れていき、あまりの痛みに僕は泣き叫んだ。


「あがっ、ぐッ、うあああああッ!」


 そうして僕は豆粒以下のサイズまで潰されて死んだのである。



 *



 残りクラスメイト数:28/39人

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