第18話 観光客、女神様を泣かせる
「あれが……めがみぞー……!」
リースは、広場の中央に存在する大きな彫像を見て呟く。
「もっと近くで見たいわ! 早く行きましょ、ますたー!」
それから、俺の腕をぐいぐいと引っ張ってきた。
「ご主人様! またあれ乗りたいですっ!」
一方、ベルは先ほどまで乗っていたゴンドラが気に入った様子だ。目をキラキラと輝かせながら反対側に腕を引っ張ってくる。
やれやれ。このままでは俺が真っ二つに引き裂かれてしまうな。
「この町に居る間は何度かまた乗る機会があるだろう。楽しみにしているといい」
「はいっ!」
最初は怖がって乗ろうとしなかったのだが、俺とリースに説得されて渋々乗り込んだ結果がこれである。実にちょろい。
「……さてと。それではパーティを強化してもらうとしよう」
そんなこんなで、俺たちは女神像へと近づいていくのだった。
ちなみに
信者に対しては基本的に平等な女神だが、召喚された異界人にはそれなりの優遇をしてくれる。
なぜなら、異界人の召喚を最終的に許可しているのは女神の意思だからだ。ただでさえ勝手に呼び出しているのに、何の特典もなしでは転移者からブチ切れられて当然だからな。
賢明な判断だと言える。
「出て来い、女神」
俺はベルとリースを自分の後ろに立たせ、女神に祈りを捧げる。神仏の類いに対する信仰心は皆無といっていいが、果たして通用するのだろうか。
「……………………」
応答がない。この俺がわざわざ祈りを捧げているというのに、随分と不遜な態度だな。段々と腹が立ってきたぞ。よくよく考えてみれば、俺が
(聞こえますか、マシロ。貴方のそれは祈りではありません。私に対して怒りながら命令しているだけです)
その時、脳内で落ち着いた女の声が鳴り響いた。
だがそもそも、俺は許可なく勝手にこちらの世界へ呼び出されている訳だからな。貴様やこの国の王に対して敬意を払う必要性を一切感じないぞ。
ましてや、わざわざ女神像の前まで出向いてやっているのに祈りを捧げなければ反応すらしないだなんて、この上なく傲慢だな。
(………………ぐすっ。貴方とはもう話したくありません……!)
泣いた。人を最弱職の観光客にしておいて随分な言い草だ。
(確かに、貴方には余り物の力を授けましたが……結果的に快適な暮らしができているので良いではありませんか……!)
その言い方だと、どうやら生活魔法がチートなのは偶然の産物のようだな。
神と名乗るからには食事や睡眠を取らずとも生きていけるのだろうから、魔法で食料や安全な空間を用意できることの意味が理解できていなかったのだろう。
(ぐすっ、貴方は……何故かこちらの世界の知識を持っていましたから……ちょっとくらい弱い力でも大丈夫かなと思ったのです……っ!)
何を言ってるんだ? ここはどう見ても『エルニカクエスト』の世界じゃないか。ゲームをプレイしたことがあれば誰でも知っているだろう。
(エルニカクエスト? ゲーム? 一体何の話をしているのですか……?)
まさか知らないとは驚きだな。
(……とにかく! ここに来た理由は分かっています……。後ろの二人にも
そうか。なら文句はない。早くそうしてくれ。
俺が心の中で返事をすると、突如として女神の気配が消失した。同時に、天から俺たちに向かって真っ白な雷が降り注ぐ。
「きゃあっ?!」
「な、なによこれっ!」
いきなりのことに驚いている様子のベルとリースだったが、この雷を受けても痛みはないのですぐに理解する。
「……! 身体に力がみなぎってくるわ……! ますたーの仕業ねっ!」
「……ということは、私たちにも
俺はベルの問いかけに対して静かに頷き、二人のステータスを参照する。
※※※※※※※※※※
*ステータス*
【ベル】
種族:獣人 性別:女 職業:
Lv.10
HP:88/88 MP:44/44
腕力:20 耐久:16 知力:12 精神:12 器用:28
スキル:アイテム拾い、心眼、クイックショット、トリプルアロー
魔法:ブースト、サーチ、カモフラージュ
耐性:なし
【リース】
種族:魔族 性別:女 職業:
Lv.10
HP:47/47 MP:140/140
腕力:11 耐久:15 知力:30 精神:20 器用:11
スキル:アイテム拾い、魔力制御、魔力追尾、
魔法:マジックアロー、ファイアボール、アイシクルランス、エンチャント
耐性:なし
※※※※※※※※※※
「ふむ……」
少々レベルダウンしているが、全体的には強化されているな。俺が二人の
しかし困ったことに二人とも後衛職になってしまったので、どちらもこなせる器用貧乏な『観光客』である俺が前衛をやらなければならない。
やれやれ、俺は
……装備を整えておかなければ。
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