俺の職業は『観光客』だが魔王くらいなら余裕で討伐できると思ってる〜やり込んだゲームの世界にクラスごと転移したが、目覚めたジョブが最弱職だったので追放された件〜
第17話 観光客、水の都をのんびり観光する
第三章 水の都の大事件
第17話 観光客、水の都をのんびり観光する
リースを
潮風が実に心地良い。
「ますたー。これあげる!」
「さっき二人で拾ったんです!」
海上に架かった長い橋を渡って町中へ足を踏み入れると、早速リースとベルが白くて丸い石を二つ手渡してくる。どうやら、また【アイテム拾い】の効果が発動したらしい。
「売ってお金にするんでしょ? ベルから聞いたわ!」
「……欲しければリースが持っていても良いんだぞ」
「どうして? 中に身が入ってないから、あたしが持っててもお腹いっぱいにならないわ!」
やれやれ、リースもベルも食べることしか考えていないようだ。
もしすると、俺が
「……分かった。ありがたく貰っておこう、でかしたぞ」
俺はそう言って石を受け取り、二人の頭をなでてやった。
「ふふふ……!」
「えへへぇ……!」
羽をパタパタさせるリースと、尻尾を振りながら獣耳を動かすベル。
魔物であるリースを人目に晒して大丈夫なのかという考えがここに来てよぎったが、周囲の通行人が俺たちのことを気にしている様子はない。
悪魔の羽が生えているとはいえ、リースはほとんど人に近い姿をしているため、余程のことがない限り魔物だとは見抜かれないのだろう。
俺も原作の知識がなければ、ベルと同じ亜人の少女だとしか思わなかっただろうからな。
「では行くぞ。俺から離れるな」
「分かってるわよ、ますたー!」
「ご主人様に一生添い遂げます!」
かくして、俺は新たな町の観光を開始したのだった。
安全な生活が確保された状態でリアルなゲームの世界を巡る体験なんて、本来はできるものではないからな。存分に楽しませてもらうぞ。
魔王は気が向いたら倒す。今のところレベルも足りていないしな。
*
そんなこんなで、まずは商店街へ向かいながら貰った貝殻を【鑑定】したところ、2000¥$相当の真珠であることが判明した。
二人のレベルが上がれば上がるほど、拾ってくるアイテムの価値は高くなるのである。【アイテム拾い】は地味だが優秀なスキルなのだ。
「……という訳でこれを買い取ってくれ雑貨屋のおっさん」
商店街へ到着して真っ先に雑貨屋を訪れた俺は、店主のおっさんに向かって言った。
「あ? なんだお前……妙に馴れ馴れしいな……」
「初めて会った気がしないんだ」
「俺はお前と初めて会った気しかしないんだが……?」
そして二つの真珠を売り捌いた結果、所持金の合計は10100¥$となった。これだけあれば、少しくらいは使ってしまっても問題ないだろう。
「ありがとう、おっさん」
「おい待て! そもそも俺はおっさんじゃねぇぞ! 聞こえてんのか!」
ちなみに、店主のキャラクターグラフィックは店ごとに使いまわされているので「雑貨屋のおっさん」はどこの町へ行っても「雑貨屋のおっさん」の姿をしている。原作通りだな。
「ご主人様……あの人、どうしてこの町にも居るんでしょうか……?」
「他人の空似というやつだ。気にするなベル」
俺は不思議そうに首を傾げるベルに対してそう答えた。
「そう、なんでしょうか……? 納得できません……!」
「どしたのベル? なんのはなしー?」
「ううん。何でもないよリース」
「んー……?」
リースは『モルド』の雑貨屋を見ていないからな。分からないのも無理はない。やれやれといった感じだな。
「……ところでますたー。次はどこに行くのかしら?」
俺が二人のやり取りを眺めていると、リースがいきなりこちらを向いて聞いてきた。
――『クレイン』に来た目的はいくつか存在するが、まずはあれからだな。
「女神像のある広場だ」
俺はそう返事をする。
「めがみぞー?」
あまり分かっていない様子のリース。
ちなみに、この世界の女神は中立的な存在であるため、人と魔物のどちらか一方に肩入れすることはない。
ただ、魔物にはあまり知られておらず、女神を信仰している勢力の大半が人間であるため結果的に人の味方をしているように見えるだけらしい。加えて、女神がもたらす神聖な力に対して大半の魔物が忌避感を抱いてしまうことも、人類にとって大きく幸いしている。
とはいえ、誰の味方にもなり得る適当な神を信仰しているとは……実に恐ろしい設定である。
「えっと、その場所に行って何をするのよ?」
「……リースとベルにも
俺はそう答えて、広場へと向かうゴンドラに乗り込むのだった。
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