俺の職業は『観光客』だが魔王くらいなら余裕で討伐できると思ってる〜やり込んだゲームの世界にクラスごと転移したが、目覚めたジョブが最弱職だったので追放された件〜
第16話 勇者パーティ、友情が崩壊して殴り合いで全滅
第16話 勇者パーティ、友情が崩壊して殴り合いで全滅
「あ、相棒……?」
「うるせえええええッ!」
豹変した僕を見て、困惑の表情を浮かべるヒロシ。そのすっとぼけた姿を見て僕はさらにハラワタが煮えくりかえる。
「さっきからゴチャゴチャ騒ぎやがってよぉ! こっちは仲間を失ったショックで吐いてんだぞおッ?! くだらないことしか言えないんだったらせめて静かにしてろよなァッ! 脳みそ付いてんのかこの猿がああああああああああッ!」
「猿にも脳みそはあるだろw」
「………………」
クソッ! 何なんだコイツ! いつもそうだけど全然話が噛み合わないんだよ! 大体なんだよ熱血ド根性って! ふざけんな! 追い詰められた人間叩いて治るわけないだろ! 昭和の家電じゃないんだぞッ! まずはテメェの空っぽの頭ぶっ叩いて治してみやがれッ! オラッ! バカ! アホ! マヌケ!
「死ねよゴミがあああああッ!」
「……分かった。ちょっと落ち着け相棒」
「テメェはこういう時だけ落ち着くんじゃねええええッ! そういうズレた態度がムカつくんだよおおおおおおッ!」
「そうなのか?」
……だめだ。しばらくましろクンをサンドバッグにしていないせいで、物凄くストレスが溜まっている。
思ってもいない(?)暴言を親友に浴びせてしまうだなんて、こんなの僕じゃない……!
ヒロシの言う通り落ち着いて……深呼吸するんだ。今は仲間割れなんてしている場合じゃない。
「はぁ、はぁ……す、すまないねヒロシ。どうやら自分を見失っていたみたいだ」
「まったく、自分の感情をコントロールできないのは甘えだぞ? 女々しすぎるぜ! まるでマシロみたいだ!」
「あァ?」
何だって? この僕がましろクンみたい……?
つまりこいつは、友人である僕に向かって「お前は無能のゴミだ」と言いたいのか?
「そうやって喚いてればカイトとリオが生き返るワケじゃねーだろ。気持ち切り替えてやってくしかねーんだ。それに――」
「黙れえええええええええええええッ!」
気づくと僕はヒロシに飛びかかっていた。
「だ、だから待て相棒ッ! 今はこんなことしてる場合じゃ――」
「ライトニングボルトォ!」
「ぎゃああああああああああああッ!」
至近距離から顔面に魔法を叩き込み、数発殴っても、まだ怒りが治まらない。
「ましろクンみたいなのは君の方だろッ! 特に察しの悪さがそっくりだッ! ライトニング――ッ」
「ふざけんじゃねえええええッ! 誰がマシロだいい加減にしやがれえええええッ!」
二発目の魔法を撃ち込もうとした瞬間、ヒロシもキレた。どうやらついに我慢の限界が来たらしい。
「うおりゃあああああッ!」
「ガハッ?!」
僕は物凄い力でダンジョンの壁に叩きつけられ、吐血する。他の部位からも出血したらしく、視界が真っ赤に染まった。
「頭イカれてんのはお前だぞッ! いい加減落ち着きやがれええええッ!」
「ゴフッ! うグッ! がはぁ!」
暴走したヒロシに何度も殴られ、全身に激痛が走る。彼の職業は
「人は叩けば治るッ! 歯ぁ食いしばれええええッ!」
「ぐはぁッ!」
重い一撃が鳩尾に入り、次第に意識が朦朧としていく。
「勇者がそんなんでどうするッ! お前の認識が甘すぎるせいで皆死んだんだぞッ! 俺に喚き散らしてる暇があったら反省しろおおおおッ! マシロはお前だああああああああッ!」
「ぐああああああああッ!」
タカシ、マサル、ルナ、カイト、リオ、散っていた仲間たちの顔が浮かんでは消えていき、遅れて痛みがやってくる。
このままだと、きっと僕は死んでしまうだろう。
――だからみんな、どうか僕に力を貸して欲しい。ましろクン化してしまったヒロシを介錯してやれるだけの力を……!
「はああああああああああああああッ!」
僕は最後の力を振り絞り、暴走するヒロシに飛び掛かった。
「ライトニングボルトオオォォォッ!」
「ぎゃあああああああああッ!」
全力の魔法を叩き込み、ありったけの力を込めて突進する。
「うわあああああああああッ!」
その拍子に僕とヒロシは勢い余って落とし穴へと落ち、トラップにかかって全身串刺しになった。近くには既に息絶えたカイトの亡骸もある。
「お前は……もう……相棒じゃねえ……っ! 末代まで……呪ってやるぜ……! がはっ!」
「なんだって、いい……。どっちにしろ……生き返るのは、僕だけだ。……君の負けだよ……っ!」
――その後、僕たちはお互いに恨み言を吐き合い、もがき苦しみながらじっくりと時間をかけて絶命した。
そして気づいた時には、再び「召喚の間」だったのである。
いつものような冷静さを取り戻した僕は、怒りに任せて大切な仲間を殺してしまったことを自覚し、深く絶望するのだった。
ましろクンがサンドバッグとしての役割をしっかりと果たさなかったせいで、こんな悲惨なことになってしまった。僕はなんとしてでもあのゴミに復讐しなければならない……!
許さないぞましろ…………!
そんな風に、憎きましろクンに対する復讐心を燃え上がらせていた矢先――
「な、なんだ……このステータスは……?!」
――僕は自分の能力値が以前と比べて明らかに低下していることに気付くのだった。
*ステータス*
【アツト】
種族:異界人 性別:男 職業:勇者
Lv.1
HP:27/27 MP:13/13
腕力:12 耐久:8 知力:7 精神:5 器用:8
スキル:聖剣の加護、魔物特攻
魔法:ライトニングボルト、リザレクション
耐性:暗黒耐性
死亡回数:2回
【ヒロシ】死因:他殺
種族:異界人 性別:男 職業:
Lv.1
HP:0/100 MP:0/5
腕力:35 耐久:25 知力:2 精神:3 器用:3
スキル:暴走
魔法:なし
耐性:なし
残りクラスメイト数:33/39人
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