俺の職業は『観光客』だが魔王くらいなら余裕で討伐できると思ってる〜やり込んだゲームの世界にクラスごと転移したが、目覚めたジョブが最弱職だったので追放された件〜
第15話 勇者パーティ、ダンジョンにリベンジする
第15話 勇者パーティ、ダンジョンにリベンジする
「ふーん……おもし、れー……トラップ……」
「カイトーーーーーッ!」
カイトが死んでしまう。
原因は、魔王の潜むダンジョン『魔窟』の内部に仕掛けられていたトラップに引っ掛かり、一人だけ下の階層へ落とされてしまったからである。
どうやら、下には鋭い針が無数に敷き詰められていて、カイトは串刺しになってしまったようだ。あまりにも
「やるじゃん……ごふっ」
その声を最後に、カイトからの応答はなくなってしまった。
「うわあああああああああああッ! なんてことだあああっ!」
僕はまた守れなかった。通路にぽっかりと空いた落とし穴を覗き込み、慟哭する。
「嘘だろカイト……死んじまうなんて甘えだぜ……ッ! 死ぬ気で復活しろよ……カイトーーーッ!」
そしてヒロシの悲痛な叫びが、落とし穴にこだました。
「……………………」
リオは何も言わずに腕を組んだままそっぽを向いている。
――現在、僕達が進んでいるのは第一階層である。
しかし、前回とは別のルートを選択することで、凶悪スライムの出没ゾーンを避けて安全に進もうとしたのだが……結果的には別の脅威によって大切な仲間を失ってしまった。
こんなのおかしいよ。
「……どうやら、悲しんでる場合でもないみたいだね」
その時、リオが唐突に口を開く。
「グギャギャギャ!」
ほぼ同時に、僕たちの背後から何かの悍ましい鳴き声が聞こえてきた。振り返ると、緑色の肌をした小さい鬼のような魔物たちが姿を現す。
「な、なんだコイツらはッ!」
「ゴブリン……かな。どうやら初めからボク達をこの場所に追い込むつもりだったらしいね」
ゴブリンたちは、通路を塞ぐように立っていた。口から涎を垂らし、とても醜い顔で笑いながら、ゆっくりとこちら側へ近付いてくる。
「くっ……!」
後ろは落とし穴で行き止まりになっているため、逃げることはできない。残念ながら、戦闘は避けられないのだ。
「みんな気をつけてくれッ!」
僕は言いながら剣を抜く。
「畜生おおおおおッ! カイトの仇だッ! 行くぜ相棒ッ! うおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
かくして、僕たちのパーティは武器を構えてゴブリンの群れと対峙したのだった。
「……フン。まあ待ちなよ。ボク一人で十分だ」
だがその時、リオが不敵に微笑みながらとんでもないことを言い始める。
「な、なにを――」
「ブラックホール」
僕が言い終わる前に、リオは魔法を詠唱した。すると、構えていた
「ボクに楯突いた罰だ。――君たちは肉の一片すら遺さない」
決め台詞のようなものを言い、ゴブリンたちに向かってブラックホールを撃ち出すリオ。
「グギャ? グ、グギャアアアアアアアアアッ!」
「グギャ?!」
「ギャギャギャ!」
ゴブリンたちは、その球体の引力から逃れることは出来ず、一人ずつ身体をグシャグシャに潰されながら吸収されていく。
「――心地良い静寂だ」
そうして、最終的にその場にはブラックホールしか残らなかったのである。
「……まあ、ボクにかかればこんなものだよ。ゴブリンなんて、雑魚モンスターだと相場が決まっているからね」
「す、すげーぜリオッ!」
一人で戦闘を終わらせてしまったリオのことを褒め称えるヒロシ。
――リオの
最初に聞いた時は意味がよく分からなくて「頭がおかしくなっちゃったのかな?」と思ったけど、まさかこんな力を秘めていただなんて……!
ますます見直したよ!
「こっちは落とし穴で行き止まりみたいだし、一度引き返そうか」
武器を収めながら僕たちの方へ振り返り、そう提案してくるリオ。
「……ところで、一つ質問してもいいかな」
「どうしたんだい? ボクに何か言うことがあるのなら、手短に済ませてくれよ」
「これ、いつになったら消えるんだい?」
僕は未だに残るブラックホールを指差して言った。
「……………………」
引き返そうにも、通路のど真ん中に鎮座するこれをどうにかしなければ、身動きが取れない。
「そうだぜ。早くなんとかしてくれ、リオ! お前ならできるんだろう? 後始末を考えずにぶっ放すだなんて、馬鹿のすることだからな! 賢いお前に限ってそんなことは無いって信じてるぜ! 熱血ド根性だ!」
ヒロシがリオに向かって言った。僕も同感だ。
学級委員長の座をかけて争った経験から知っているけど、彼は何も考えずにカッコつけて行動するましろクンのようなカスの社会不適合者とは違う。きっと、この状況も想定済みだ。
「…………ああ、当然だろう。ボクの能力だからね」
ほら。やっぱり、リオには何か考えがあるんだ。
「こういうのは、生み出した本人が触れれば消えるものと相場が決まっている――」
言いながら、ブラックホールにゆっくりと近づくリオ。
そして、右手でそっと球体の表面に触れたその瞬間。
――ぐしゃり、という何かが潰れるような音がした。
「う、うぎゃあああああああああああッ?!」
同時に、リオが悲痛な叫び声を上げながらブラックホールに呑み込まれていく。
「リオーーーーッ!」
「ぼっ、僕の手を掴むんだっ!」
叫ぶヒロシと僕。
「たっ、たすけ――ぐあああああああああッ!」
結局、リオは一瞬にして全身を飲み込まれてしまった。その姿が、バリアで自滅したルナと重なる。
「クソッ! カイトに続いてリオまで……ッ!」
「うっ、うえええええっ!」
気づくと僕は吐いていた。
「おい、どうしたんだ相棒ッ! しっかりしろッ!」
もう嫌だ。どうして僕ばかりがこんな目に遭うんだ。散々じゃないか……!
「うぐっ……クッソぉ……! くそおおおおおおおおッ!」
「おい! 落ち込んでる場合じゃないぞ! 甘ったれるんじゃねえッ! 何度でも立ち上がれ! 相棒おおおおおおおおッ!」
「テメェはさっきからうっぜえんだよおおおおおおッ!」
気づくと、僕は大切な親友を怒鳴りつけていた。
*ステータス*
【カイト】死因:トラップが面白かった
種族:異界人 性別:男 職業:
Lv.1
HP:0/57 MP:48/48
腕力:11 耐久:10 知力:12 精神:20 器用:10
スキル:演説、支配、ロイヤルガード
魔法:ヒール、マジックミサイル
耐性:火炎耐性、冷気耐性
【リオ】死因:ブラックホールで自滅
種族:異界人 性別:男 職業:
Lv.1
HP:0/66 MP:20/37
腕力:21 耐久:15 知力:13 精神:14 器用:11
スキル:暗視、ブラッディスラッシュ
魔法:ブラックホール、ブラインド
耐性:毒耐性、暗黒耐性
残りクラスメイト数:34/39人
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