第14話 勇者、絆の力で再起する
「うぅっ……うああああああああっ!」
ストレス解消サンドバッグ(ましろクン)を失った僕はもう、散っていった仲間たちや、去っていった仲間たちを元に戻すことはできない。
「なんてことだあああああああああっ!」
召喚の間で一人うずくまり、慟哭する。
「うっ、ううううううっ!」
先ほどまで僕と話していた王は、何処かに消えた。
どうせ誰も居ないんだ。もう動きたくない。
「タカシぃ……マサルぅ……ルナぁ……っ!」
ごめんよ。魔王を倒して君達を生き返らせてあげないといけないのに、僕はもう疲れてしまったみたいだ。恨むならましろクンを恨んでおくれ……。
「うああああぁ……」
僕は、クラスメイトの大半が自分に付いてきてくれなかったという事実を受け止めることができないでいた。あんなに人望があったのに……嘘だろ。あまりにも薄情すぎる。こんなのってないよ。
「そこで諦めちゃうんだ」
――その時、また背後から声がした。
「き、君は……!」
僕は顔を上げて振り返る。
「おもしれー勇者」
「
そこに立っていたのは、僕のクラスメイトである
「俺もいるぜ、相棒!」
「
カイトの後ろから現れたのは、僕の一番の親友――
法よりも自分の信じた正義を貫く確固たる信念を持っていて、甘えた人間を嫌う。だから存在自体が悪であり、甘えの塊であるましろクンを治療するために竹刀でしばき倒していたら、先生に見つかって学校を退学させられそうになったことがあった。
もっとも、その時は学年一の優等生である僕が抗議してどうにか退学を取り消してもらったけどね。――とにかく危なっかしくて、不器用で、放っておけない奴なんだ。
「お前には恩があるんだ。返しきるまでは絶対に見捨てらんねーよ!」
「ヒロシ……!」
まさか、そのヒロシに勇気づけられることになるだなんて。
……そうだ。僕はクラス全員から見放されたワケじゃない。こんなにも大切な仲間たちがまだ残っているじゃないか!
「フン。……ボクを忘れてもらっちゃあ困るね」
そこへ、さらにもう一人。
「
「気が進まないけど、協力してあげるよ。学級会長の座をかけて争った……
「ライバル……か」
彼との関係は、一言では表せない。
向こうからは一方的にライバル視されているけど、僕は大切な友人だと思っている。何故なら、彼は中学の時からずっとましろクンをしばき回していたからだ。
ましろクンのことが嫌いな奴に、悪い奴なんていない。そうだろう?
「アツト。オレの知ってる学級委員長は、こんなことじゃへこたれないはずだけど?」
「そうだぜ! 甘えてる場合じゃねえぞ! 何度だって死ぬ気で立ち上がれ! 死ぬ気で頑張れ! 頑張れ頑張れ頑張れ頑張れッ! 熱血ド根性だッ!」
「……まあとにかく、ボクに
絶望のどん底だった僕に対して、熱い言葉の数々を投げかけてくれる仲間たち。
「……分かったよ。みんなありがとう!」
皆から再び立ち上がる勇気を貰った僕は、もう絶望なんてしていなかった。
「その意気だぜ相棒ッ!」
「協力くらいはしてやるよ。倒すんだろ? 魔王」
「……うん、そうだねカイト」
彼の言う通り、絶対に魔王を倒してみんなで元の世界に帰るんだ! ましろクンは別にこっちの世界で死んだままでもいいけど!
いや、大切なサンドバッグだからやっぱりダメだ! とにかく全員で帰ろう!
「僕は……ここにクラス最強のチームが揃ったと思う! もう絶対に諦めないし、誰も死なせない! 絶対にみんなで生きて魔王に勝とう!」
「安心しろよ! 言うまでもなく俺は不死身の男だぜッ!」
「ふーん。コンテニュー不可能の魔王サマ退治なんて、おもしれーじゃん」
「……フン。無駄に暑苦しいな。――だけど悪くない」
かくして僕は絆の力で立ち上がり、決意を新たにするのだった。
魔王め……首を洗って待っているがいいッ!
*ステータス*
【アツト】
種族:異界人 性別:男 職業:勇者
Lv.1
HP:52/52 MP:21/21
腕力:19 耐久:12 知力:11 精神:10 器用:15
スキル:聖剣の加護、呪い避け、魔物特攻
魔法:ライトニングボルト、ホーリーランス、リザレクション
耐性:電撃耐性、暗黒耐性
死亡回数:1回
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