第9話 町娘

 私は町にある初等学校へ通ったんだけどそれもあって田舎町娘の言葉も侯爵令嬢の言葉も使えるようになったの。もちろん普段は町娘の言葉よ。だってご令嬢言葉は面倒くさいもの。


 普通に触られても何も浮かばないんだけど時々私が虐められることが浮かんできたわ。そんな時はその子からは逃げたり思い浮かんだその場所へ行かないようにしたりしたわ。男の子たちはからっかてくるだけだからいいけどなぜかグループの違う女の子たちからは普段から無視されていていじめからは逃げていたからもっと睨まれるようになったのはムカつくけどしかたない。男女関係なく私に悪いことをしそうな人がわかるのは助かったわ。

 

 こういうことが起きていくと私が他の人よりずっとずぅっと可愛いのだとわかってきたわ。私って女の人はエイダお母さんしか知らなかったから貴族ならみんなきれいなのだと思っていたの。メイドは女の人に数えていなかったし。

 でもペイジ伯母様は全く美人じゃないし学校の先生で元ご令嬢という人も美人じゃなかった。

 侯爵家では外に出なかかったけどここでは街へ出ることもあるのよ。旅の途中っていう貴族の豪華な馬車を時々見かけるけどキラキラしたドレスを着た女の人はブスばっかりだった。


「私が美人だから男の人から意地悪されることが浮かぶの?」


「そうよ。貴女は私に似て美しいもの。男たちがほしがるのよ。でもね、簡単に与えてはだめよ。金を持っている男を狙いなさい。まずは私に相談してちょうだいね」


 私はお母さんとは似てないと思ったけどお母さんも間違いなく美人だからそれについては何も言わなかった。


「もしかして女の子たちから無視されたりいじめられそうになるのもそのせい?」


「女は男を虜にする美しい女に嫉妬するの。ほんとあいつらのやり口は汚くて嫌になるわ」


 お母さんは思い当たることがあるらしくてハンカチを噛んでくやしがっている。


「でも貴女にそれから逃げられる力があってうらやましいわ」


 お母さんはそう言って私の頭を撫でてくれる。

 

 お父様が亡くなってお母さんは再婚の気持ちもないみたい。たまに外に出かけると次の日に帰ってくることもあった。


 街ではすれ違いに触れただけでいやらしいことをされることが浮かんだり女の子たちの妄想なのか大人の男たちに拉致される自分の姿が浮かんだりした。


「学校の男の子たちからは何も浮かばないのにどうして街の大人からはやなことが浮かぶの?」


「ダリアナの学校の子たちはまだ子供だから貴女への純粋な好意で本当に悪いことも考えていないからでしょうね」


 私はきれいなことは損なことばかりなのかもしれないと思い始めていたわ。


「馬鹿ねぇ。損なわけないじゃないの。試しに男の子たちに時々にっこりとしてみなさい。でも簡単に触らせたり貴女からも触れたりしちゃだめよ。手に入らなそうなのにもしかしたらって距離が大事なんだから」


 お母さんにアドバイスされて初等学校で試してみたら三日後には机の上にプレゼントの山になったわ。こんな簡単なことでこんな風になるなんて驚きと喜びではしゃぎたくったけどそれはお母さんに作戦としてだめだと言われていたからグッと我慢してにっこりと微笑んでやった。そしてそのプレゼントたちからカードだけこれ見よがしに抜くの。


「うれしいわ。お礼のお手紙を書かなくちゃ。でもみんなの迷惑になっちゃうから日常のプレゼントは遠慮してくれると嬉しいわねぇ」


 まわりに聞こえるように独り言を言う。

 平民が日常からくれるプレゼントなんてたかが知れているのだからイベントまでにしっかりと貯金してバーンと贈ってほしいわよね。


 私は翌日一番高価なプレゼントをしてきた男の子へお礼の手紙を渡した。真っ赤な顔でハクハクを口を動かすだけのおとなしめの男の子だった。

 一週間後にはその男の子は学校を辞めた。他の男の子からの嫉妬でいじめられたらしいというのは付き合いのあるグループの女の子たちから聞いたけど特に何も感じなかったわ。


 グループの女の子たちには男の子たちからのプレゼントをこっそり配っておいたからずっと味方のはずよ。


 お母さんに教師たちへの応用編も教わったわ。男の教師に触れば私に変な感情があるかどうかはすぐにわかる。変な感情を持つ教師にちょっと甘えたことを言えばテストの内容は教えてくれるし点数も上乗せしてくれる。大人だからプレゼントもなかなかにいいものをくれたわ。


 そういう教師とは二人きりにはならないように気をつけていたのだけどある日グルになった二人の教師に空き教室に連れ込まれて危ないことになった。たまたま女性教師が通りかかって私は怪我もなかったのだけれど、これが大きな問題となって私は学校を辞めなくてはいけなくなってしまったの。

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