第243話 フィーア肥え太る秋(秋ではない) ⑫

 次の日、フィーアはコロッケを持ってきた。


「コロッケさんコロッケさん、カレーにつけてもよし、ソースでかけてもよし!」

「本当にいろいろ出てくるな……」

「ハイムくんの分もあるよ!」


 昨日俺が、一欠片分カツをもらったことでフィーアは俺の分まで用意してくるようになったらしい。


「味見は昨日のうちにしてるからね、保証するよ!」

「……夕飯とは別に味見もしたのか?」

「うん!」


 したのか……

 いやいいんだけどね?

 こうなったフィーアは、おそらく俺だと絶対に止まらないだろう。

 俺が止められないとも言えるが。


「というわけで、どーぞ!」

「……え、何個あるのこれ」

「えーと……二十個くらい? あ、いくらでも食べていいからね。半分くらい昨日味見しちゃったし、私はカレーと合わせる分があれば……」

「えっ?」

「えっ?」


 つまり、それは既に昨日夕飯に加えてコロッケを二十個食べているということになるわけだが。

 …………えっ?

 コロッケはめちゃくちゃ美味しかったです。


 そしてまた別の日。


「今日は一杯のサラダです、生で食べてよし、味をつけてもよし、カレーにつけてもよし!」

「最後は少し邪道だとおもうが……」

「いいんだよー、味変味変。こういうのもたまには大事なんだって!」


 大量のサラダをフィーアは持ち込んできた。

 キャベツを中心とした、健康的な料理といえよう。

 量に目を瞑れば。

 あと、フィーアは大半に味をつけてたべていた。

 野菜を取るのはいいけど、結局食べ過ぎには変わらない。


 そしてまた別の日。


「今日はねー、食後のデザートを用意したの。牛乳を使ったアイスクリームだよ! カレーと牛乳って……合うよね!」

「まぁ、合うけどさ」

「流石にこれは混ぜたりしないよ。あ、飲み物に普通の牛乳もあるから」


 今日のフィーアはおかずではなくデザートだ。

 美味しそうな白いアイスクリーム。

 最近、貴族の間ではやっているという高級なお菓子。

 それが、豪勢に3つも。

 こういうところはお姫様だなって感じだけど、それはそれとして。

 一つは俺のだとして、二つ食べるのか。

 そしておそらく普段の様子からして、夕飯前に味見と称して食べてるよな。

 ……何個食べたんだ?


 なんて日が続いた。

 何日も、何日も、何日も。

 実はこれ、そもそもの始まりはグオリエの呪本騒動前だ。

 カミア皇女と俺が邂逅して少し経ったあたりのこと。

 なので、まぁあれだ。

 呪本騒動で真面目なことをしている最中も、昼はカレーでフィーアが幸福になっていたということだな。

 まぁ、流石に呪本騒動が始まる頃には毎日カレーということもなくなっていたが。

 ストレスもあって、逆にフィーアの食事量は増えていたようである。


 ―

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