第242話 フィーア肥え太る秋(秋ではない)⑪

 それから一週間が経ち。

 そろそろフィーアも飽きてきたかなと思ったが、そんなことは全然なかった。


「今日はねー、カツを揚げてきました」

「おー」


 おかずでバリエーションをつけ始めたのだ。

 カツとカレーは非常に合う。

 味変としても完璧だろう。

 せっかくなので俺も、カレーにつけたカツを一切れ分けてもらった。

 カツの歯ごたえとカレーがいい感じに噛み合って、美味しい。


「おいしいよーーーーー!」

「これの美味しさは、八割フィーアのカツにある気がするんだが」

「おいしいよーーーーー!」

「聞こえてないなこれは」


 美味しい美味しいと、食べ続けるフィーア。

 なんか顔が簡単になってる気がする。

 何を言ってるのかと思うかもしれないが、こう、簡単になっているんだ。

 わかってほしい。


「おいしかった!」

「それはよかった。ほら、カレーついちゃってるから拭きなって」

「ん!!」

「はいよ」


 目を閉じて顔を突き出してくる。

 ある意味キスを待っているかのようなアレだが、完全に俺に吹いてもらおうとしているやつだ。

 とにかく甘えたいという感情が全面に押し出されている。


「んー、しあわせー」

「そうだな……」


 最近のフィーアは幸せそうだ。

 色々と面倒事が片付いたというのもあるだろうけれど。

 何より、毎日俺の手料理を食べているというのが大きいんだろう。

 多分、きっと。

 いやいくらなんでも幸せを謳歌しすぎじゃないだろうか。

 大丈夫かな……


「明日も! 明日もよろしくね、ハイムくん!」

「お、おう……まだ続けるのか?」

「私はまだまだ行けるよ! おかわり!」

「そ、そうか……」


 今日は俺も夕飯をカレーにしたから、量はそれなりに作ってあるし持ってきてある。

 だからまぁ、おかわりが食べたいのであればあるのだが。

 ……大丈夫かな。


「…………」

「…………」


 キラキラキラキラ。

 フィーアの瞳が輝きまくって、俺を見てくる。

 じいいいいいいいいっと。

 じいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっっっっと。

 こっちを、見てくるのだ。

 うん、これは断れないな!


「……しょうがないな、一杯だけだぞ」

「やったーーーーー!」


 かくして、フィーアのカレー三昧はまだまだ続いていく。


 ―

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