第239話 フィーア肥え太る秋(秋ではない)⑧

「――おいしい」

「おお」

「おいしい! おいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしい!

 すごいよこれ美味しいよ舌がとろけそうだよ、口の中が幸せだよ、幸福感に体が包まれていくよすごいすごいすごい!

 ああああお腹が満たされていくうう! これだよこれ! カレーを私は食べているんだという実感! 空腹を満たすという至福! 生まれてよかった! 生んでくれてありがとうお父様お母様フィーアは今日も元気です」

「……フィーア?」

「何がすごいって、これはハイムくんが作ってくれたカレーなんだよ、世界でただ一つのハイムくんカレーなんだよ、カレーをハイムくんが作り給うたんだよ。

 私はそれを卑しくも授けられているんだよ、こんな幸福があっていいの? こんな素晴らしい日があってもいいの?

 ううん、きっと許されない。私はきっとバツを受けるんだね。ああ、でもハイムくんのカレーを食べれた時点で私に悔いはないよいつでも来て、できればハイムくんのデコピンとかがいいな。えへへハイムくんのデコピンえへへ」

「……フィーア? フィーアさん? フィーア様?」

「ああハイムくんと結婚したら、こういう料理がいつでも食べれるのかな。そんなことになったら私は幸福でおばあちゃんになるまで生きれちゃうよハイムくんと一生添い遂げちゃうよ。

 なにそれ幸せすぎる、ハイムくん好きぃ。えへへへへ、言っちゃったこんなにも幸せだからしょうがないよね。うんうんしょうがない。

 これからもずっとハイムくんと一緒一緒、一緒に生きていくのー、えへへへへへへ」

「落ち着けフィーア! めちゃくちゃ恥ずかしいこと言ってるぞ!」

「はい! 末永くよろしくお願いしま――――ハッ」


 ……よ、よかった。

 フィーアが正気に戻った。


 なんというか……やばいな、カレー。

 なにか変なもの入ってないよな……?

 食べてみる。

 味は……普通だった、人参は硬い。


 ―

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