第228話 フィーア②
本当にいろんなことが会った。
学園に入学して、フィーアと出会って。
クラスの連中とグオリエから攻撃されて。
フィーアの秘密を知った。
そして、フィーアを好きになって。
グオリエを決闘で倒して。
俺達は、ようやく平和な日常を手に入れた。
バイト、クラブ、そして決闘。
決闘してばかりだな、と思うけれど。
まぁ、それでもああいう日常は楽しかった。
そして、季節は夏へと変わっていく。
きっと、いろいろなことが起こるだろう。
「そうだな……涼しいところで本を読みたい」
「いつも通りじゃん! 涼しいところって図書館でしょ!? 本当に何にも代わり映えしないよ!」
「正直、それでいいんだよ。代わり映えのしない日常で、魔術のことだけを考えて生きていきたい。そう考える自分もいる」
別におかしなことではないはずだ。
俺は魔術師で、周囲からは天才と呼ばれるほど魔術に熱中している。
魔術のことだけを考えて生きていく生き方も、平民の俺ならできるはずだ。
それこそ、1日中魔術の研究だけして、素材が足りなくなったり生活費が足りなくなったときだけ冒険者として稼ぎに行くとか。
「えー、なんかもったいないなぁ」
「そう、もったいない。流石に俺も、完全にそれだけで生活していくつもりはなかったよ」
少なくとも、学園に入学した時の俺はこう考えていた。
この国のどこかしらの研究機関に所属して、魔術の研究に関わっていくのだ、と。
それは組織に所属するという時点で、魔術だけを考えて生きていくことはできないということでもある。
自由には責任が伴う以上、より多くの自由を求めるならそれだけの立場と責任が必要なのだ。
とはいえ、まさか国の騎士団に所属して国政に関わっていくことになるとは思わなかったが。
「そう考えると、騎士団って自由に魔術の研究とかはできそうにないよね。その辺どうなの?」
「順調に話がずれていってるな。……まぁ、騎士団でも魔術師はいて、彼らは独自の研究とかをやってるそうだから、そこまで不自由はしないんじゃないかな」
そもそも、同じ時代にもう一人天才がいるとはいえ。
俺だって歴史に名を残せるくらいの魔術師になれる素質がある。
そういう存在を、ただ軍人として腐らせるのは殿下の願うところではないだろう。
「っていうか、俺の今後の話はいいんだよ。今の話だ」
「そしたらハイムくんが、代わり映えしないことを言ったんじゃん!」
「俺がしたいことは、読書と――それから、フィーアと一緒に何かをすることだ」
「え、ぅ……」
少し恥ずかしそうに、フィーアは視線を逸らした。
「そういうフィーアはどうなんだ? この夏に、何かしたいことはないのか?」
正直、俺に聞くよりフィーアの願いを聞いたほうが早い。
少なくとも俺から、これ以上答えが出てくることはないぞ?
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