第216話 対決⑧

 てっきり、助けに来るのは師匠だと思っていた。

 この国の最強戦力。

 もしかしたら陛下の方が強いかも知れないが、この場に師匠がいれば負けることはないだろう、と思えるくらい師匠は強い。

 何より、彼女は娘の窮地とあらば駆けつけるタイプだろう。


 そう思っていたのだが……


「カミア!? どうして!? 他国の姫とか、こんな危険な場所にいたらだめだよ!」

「水臭いこといわないでくだサイ! 私はフィーアの親友、貴方のピンチに駆けつけなくて何だというのデス!」


 フィーアの言う通り、これは俺達の国の問題だ。

 もしこれでカミア皇女になにかあったら、下手すると王国と帝国が戦争に発展しかねないぞ!?


「あー……カミアがどうしてもと言って聞かなくてな。心配するな、もしもの時は私がなんとかする」

「ディア! あまりアタシを子供扱いしないでくだサイ! あの魔物を抑えるのに強力な駒がもう一人必要だったのでショウ? アタシなら、その役割きっちり果たせマス!」


 とはいえ、殿下が許可したということなら、俺は何も言うまい。

 そもそも今の俺は、集中していて話ができないからな。

 そして、殿下とカミアが視線を合わせてうなずきあうと、同時に魔物へ斬りかかる。


”――――!!!!”


 咆哮とともに、迎え撃つ魔物。

 二人の連携は見事なもので、凄まじい身体能力を誇る魔物に対し、一歩も退かずにそれを迎え撃っている。

 片方が攻撃し、もう片方が魔物の攻撃を受ける。

 お互いがお互いの隙をフォローするような動きは、一朝一夕でできるものではない。

 あの二人、相当な回数剣を交えたことがあるな?


 他国の姫と、王太子殿下。

 なんとも不思議な繋がりの二人の連携で、魔物は翻弄されていく。

 しかし、二人は魔物に対して決定打を与えられていない。

 翻弄こそされているが、魔物も縦横無尽に動き回っている。

 これは、俺の魔術を当てるのは難しいだろう。

 それに――


”――――!!!!”


「……ビームか!」

「ハイムくんを狙ってる!」


 魔物には、この遠距離攻撃手段がある。

 そして、お互いが拮抗した状況で殿下か皇女が動けばその均衡が崩れる。

 となれば……


「……ここで魔術を使います!」

「わかった! 気を付けてくれ!」


 それを、チャンスに変えるしか無い。

 ビームを放つということは、その瞬間動きが止まるということだ。

 その瞬間を撃つ。

 もちろん、向こうも素直にそれを許してくれるはずもないが。

 それでも、ここでやるしかないのだ。


 俺は魔物と向かい合う、奴は既にビームの準備を終えていて、俺に向かってそれを放つ。

 そして俺も、魔術を魔物に向かって解き放つ!

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