第215話 対決⑦
魔物と騎士達が激突する。
剣を振るう騎士に対し、魔物は大きく咆哮して威嚇した。
”――――!!”
直後、その体が膨れ上がる。
まずい、と思ったがもう遅い。
「うわああああ!」
「何だこの力は!」
魔物のふるった腕で、騎士たちが吹き飛ばされた。
先ほどよりパワーが上がっている。
原因は、小型魔物が消えたことだろう。
小型魔物に回していた力が、小型魔物を維持できなくなったことで本体に集中したといったところか。
小型魔物を出現させる前と後で、その能力が変わらなかったのは魔物がそれを隠していたからだろう。
小型魔物の出現が対策された場合、本気を出すことで不意をつく算段だったということか。
狡猾な奴だ。
「被害は!」
「問題ありません、まだ戦えます!」
騎士たちはなんとか、といった様子で立ち上がる。
彼らの言う通り、まだ騎士は戦えるだろう。
しかし、大きなダメージを受けたことに変わりはない。
もう一度同じように吹き飛ばされたら壊滅してしまう。
「お兄様!」
「解っている! くれぐれも攻撃を受けないように立ち回るんだ!」
騎士はそれに応じるものの、本来の能力を発揮した魔物の能力は凄まじい。
単純にスペックが違いすぎるのだ。
騎士たちがどれだけ魔物を抑え込もうとしても、身体能力の差は遺憾ともしがたい。
翻弄され、一人、また一人と脱落していく。
幸いなのは、無理だと判断した騎士は自ら後退し、死者は出ていないということくらいだ。
こういう、とにかく強力な単騎に数で相対しても立ち向かうことは難しい。
必要なのは、少数精鋭。
つまり強力な個だ。
ここにいるものの中では、俺と王太子殿下の二人がそれに該当する。
「これは……いささか厳しいな……!」
しかし如何に剣の天才たる殿下と言えど、このレベルの魔物相手に単独で立ち向かうことは難しいだろう。
殿下と連携して魔物を抑え込むとなると、それが可能なのはこの国におそらく二人。
一人はホーキンス殿。
しかし彼は、魔物が学園の外に出ないよう、ココにいない騎士団の騎士を連れて警戒態勢に当たっている。
とはいえ、この状況ではホーキンス殿が助太刀に来てもおかしくはない。
そしてもうひとりは――
その時だった。
凄まじいスピードで、”彼女”が魔物に攻撃を仕掛けたのは。
”――――!!!!”
魔物は、反撃にビームを繰り出す。
空中に放たれたそれを回避して、彼女は殿下の隣に着地する。
そして、
「ハイ! フィーア! ディア! ハイム! 助けにきたデスよ!」
カミア皇女は、笑みを浮かべて俺達にそう告げた。
……え、カミア皇女!?
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