第214話 対決⑥
俺は、杖を持ち帰る。
持ち替えた杖を観て、グオリエは何か反応するだろうか。
それは、収奪の杖だ。
周囲からマナを奪い、魔術の効果を強化する杖。
「灼熱よ!」
それを使って、魔術を強化する。
するとどうなるか。
周囲からマナが消えたことで――
”――――!!!!”
魔物が姿を表す。
俺がグオリエのノートを出現させた時と同じだ。
マナの中を漂うということは、マナがなければ漂うことができないということだ。
故に収奪の杖でマナを奪えば、大型魔物はその姿を隠せなくなる。
もちろん、マナがなくなればこちらに対してもデメリットはある。
ここから先は、魔術が一切使えなくなるということだ。
ただ、それでもできることはある。
マナが枯渇しても既に使用した魔術がその効果を失うわけではない。
身体強化魔術の効果は残る。
ここからは魔術戦ではなく、近接戦がメインになるだろう。
「各員、フィーアを守りながら大型魔物を抑えよ!」
殿下の号令。
ここからは時間との勝負になる。
身体強化魔術の効果が切れたら、この場にいる全員大型魔物に殺されるしかない。
ただ、悪いことばかりではない。
むしろ、マナを枯渇させたことである変化がおきた。
小型魔物が消えたのだ。
あいつらは、マナを使って大型魔物が出現させていたのである。
これは予想できたことだ。
おそらく大型魔物は、自分の一部を切り取ってマナの中に流すことで小型魔物を出現させていたのだ。
その証拠に、アレだけ激しく魔術を使って戦っても周囲のマナが枯渇していなかった。
マナが枯渇すると不味いのは、小型魔物を出現させられなくなる大型魔物もそうだから。
奴が、マナに溶け込む能力を使って、マナを外から供給していたのだろう。
だが、収奪の杖によってマナを奪い取ることで、それができなくなる。
これ以上マナを遠くから供給しても、俺の魔術の威力を上げるだけ。
奴がすべきことは――俺を排除することになった。
結果、
”――――!!!!”
奴は、俺に対してビームを放つ。
今俺は、魔術も使えないし身動きも取れない。
狙ってくれと言わんばかりの状態だ。
だからこそ、魔物も俺を狙う。
しかし――
「甘い!」
間に、殿下が割って入る。
そして剣を振るい――ビームを切り裂いたのだ。
「ぐ、おおお!」
「殿下!」
「お兄様!」
周囲から悲鳴が上がる。
けれど、殿下は構わずそれを切り裂いて、俺を守る。
マナが奪われたことで、今の彼を守るのは剣と身体強化魔術しかない。
だというのにとんでもないパワーだ。
「あまり私を舐めないでくれよ……これでも、この国の次期王なのだから……!」
いや、それは関係あるのだろうか……
ともあれ。
収奪の杖によって強化された魔術は魔物にとっても脅威なのは俺を狙ったことで明らか。
俺はもっとマナを奪って、魔術の威力を高めることに集中する。
その間、皆が俺を守って大型魔物を抑える。
そして俺の魔術を大型魔物に当てられれば勝利だ。
まさに最終局面、といったところである。
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