第213話 対決④
「全員、フィーアを守るよう陣形を組め!」
「はい!」
この行動は、想定できなかったわけではない。
むしろ、かなり警戒されていた行動だ。
グオリエがマナに身体を溶かして消えた以上、その大本である呪本の魔物にできない謂れはない。
できる方が自然とすら言えた。
だから、大型魔物がそうした時点で、即座にフィーアを守るよう騎士が動きを変えるのだ。
「ハイム、君が頼りだ」
「もちろんです、殿下」
そして俺と殿下も動きを変化させる。
先程までは俺が騎士たちへ小型魔物が複数寄らないよう動いていた。
しかしここからは、殿下がその役割を担う。
騎士を囲むように動く小型魔物へ、殿下が切り込んでいく。
俺はと言えば、動きを止めて意識を集中させていた。
小型魔物はフィーアを狙っているから、俺のもとには現れない。
だから、こうして隙をさらしても攻撃を仕掛けてくる奴はいない。
そもそも、完全に隙だらけというわけでもないから、むしろこの隙に攻撃しかけてきた奴は反撃できるだろう。
それが解っているから、大型魔物も俺に手を出さない。
あくまで狙いは、フィーアだ。
「……フィーア! 左に跳べ!」
「うん!」
そして俺が、マナのゆらぎを感知して叫ぶと、フィーアがその言葉とおりに横へ飛ぶ。
同時に騎士の一人が俺の指示した方向に躍り出ると――
そこに、怪物の腕が出現した。
凄まじい勢いで腕を振るい、騎士がそれを受け止める。
同時に、魔物が拳を振るいながらその姿を表した。
やはり、攻撃の瞬間はその身を晒さなければならない。
「炎よ!」
俺が叫び、大型魔物に攻撃を加える。
すると、大型魔物は再び霧散した。
騎士は無事だ。
しかし明らかにその顔は苦しそうである。
不味いな。
状況は再び硬直していた。
しかし大型魔物が姿を消した上、ヒットアンドアウェイに終始するせいで攻撃が通らない。
そのくせ、直接的にフィーアを狙ってくる上、それを察知できるのが俺しかいないものだから相手の攻撃に対応しきれない。
大型魔物に攻撃される度、それを受ける騎士が疲弊する。
殿下が対応できれば違うだろうが、大型魔物もそれは解っているだろうから、殿下のいる場所には出現しないだろう。
状況は膠着しているが、こちらの疲弊が増えたのに向こうはダメージを受けなくなった。
かなり不味い状況だ。
ここから、それをひっくり返すには――
「殿下、アレを試します!」
「解った、各員備えよ――!」
――これしか、方法はないだろう。
「周囲のマナが消失する!」
殿下の言葉が、戦場に響いた。
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