第212話 対決④
小型の魔物と騎士たちが入り乱れながら乱戦を繰り広げる。
俺は小型の魔物を魔術で吹き飛ばし、騎士たちが囲まれるのを避けていた。
小型の魔物は、それ単体は大した強さではない。
というか、騎士の人たちが強いのか。
どちらにせよ一対一なら騎士が対応できる強さだ。
けれど、問題はとにかく数が多いということと……
「大型、来るぞ!」
本体である大型の魔物が戦場を縦横無尽に駆け回っているということだ。
殿下の号令で、騎士たちが散開する。
そして、殿下自身が飛び込んできた大型魔物と直接相対する。
魔術を織り交ぜた剣技で、正面から大型魔物とやりあっている。
流石は殿下ってところだ。
戦況は膠着している。
とはいえ、それはあまり言いことではない。
「このままじゃきりが無いよ……!」
フィーアの声が響く。
同時、複数の騎士が小型魔物を切り飛ばした。
しかし、その直後に大型魔物が咆哮し、小型魔物が補充される。
この有り様だ、どれだけ倒しても小型魔物は湧いてくる。
対してこちらには騎士たちの体力という限界もある。
周囲を漂うマナが持つかどうかも微妙なところだ。
つまり、長引けば長引くほどこちらが不利になる。
ただ、完全にどうしようもないかと言えばそうではない。
「ハイム!」
「はい!」
殿下が俺に声を掛ける。
二人で、同時に大型魔物に魔術を叩き込むのだ。
魔物はそれを受けても、構わず咆哮しながら小型魔物を生み出し続ける。
小型魔物を生み出すにはどうやらあの咆哮が必要なようで、その瞬間は隙がうまれるといったところか。
何にせよ、その隙を攻撃することで俺達は少しずつ大型魔物にダメージを与えていた。
今のところ解っていることは二つ。
一つは先程言ったように、小型魔物は切りなく湧いてくるが、呼び出すには大型魔物の咆哮が必要だということ。
そしてもう一つは、小型魔物の数には限りがあるということだ。
大型魔物が小型魔物を呼び出すのは、小型魔物が倒された時だけ。
そうでない時は、一切呼び出す素振りが見えないのである。
これは、こちらにとって悪い話ではない。
今のところ膠着しているということは、こちらの戦力でこのまま状況を維持できるということ。
小型魔物を倒して隙を作っている間に攻撃すれば、少しずつだが大型魔物を弱らせることができる。
だから、このまま行けば後はどちらかが力尽きるかを競う持久戦になる。
まぁ、このまま行けば……の話だが。
大型魔物は、小型魔物を呼び出した後再び咆哮した。
直後――
その姿が、掻き消える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます