第211話 対決③

 とはいえ、そんなことは最初から読めている。

 俺は一気に横っ飛びで回避すると、そのまま魔術を放ち続ける。


”――――!!!!”


 魔物はそれを咆哮しつつ受け、こっちに突っ込んでくる。

 それでも構わず、魔術を放つ!

 効いていないわけではないのだ、無視できるダメージというだけで。

 だが、蓄積させれば話は違う。

 やがて、ダメージを煩わしく感じたか、魔物が回避を織り交ぜ始める。

 しかしそれでは俺に追いつけなくなる。


「今だ、フィーア!」

「うん!」


 そこに、フィーアが追撃をいれるのだ。

 魔物の周囲に浮かんだ青白い炎。

 俺の炎と区別するため、敢えて色を変えたそれが――一気に魔物に突き刺さった。


 全て、直撃である。

 威力はフィーアが手にした剣で強化されている。

 時間をかけて準備しただけあって、魔物は明らかに苦痛のうめき声を上げていた。


「よし、効いてるよ!」

「ああ、だけど気をつけろよ」


 直後。

 魔物は、高らかに咆哮すると――


 口元が光る、再びビームを放つのだ。


 狙いは――フィーア!


「ハイムくん!」


 その声を受けながら、俺は――魔物に向かって突っ込む。

 フィーアを守るのではない。

 フィーアを攻撃する瞬間の隙を着いて、追撃するのだ。

 であれば、フィーアはどうする?

 そちらも問題はない。


 今のフィーアの呼びかけは、という意味なのだから。


 俺は、杖に土塊をまとわせる。

 魔術で作られたそれの硬度は、下手な鉱石よりもずっと堅い。

 それを、身体強化されたスペックでもって、魔物にぶつけた。



 直後、ビームを放ちながら魔物は吹き飛ぶ。



 結果から言えば、そもそもビームを放つ瞬間に攻撃したことで、フィーアへの一撃は少しそれた。

 多少それればビームはフィーア本人でも対処可能。

 俺はそれを見越していたわけだけど。

 たとえそうならなくたって、問題はない。

 ”彼”が、フィーアを守ってくれる。


「光の壁よ!」


 直後、殿の声が戦場に響き渡り。

 ビームは、出現した光の壁によって弾かれた。


「殿下!」

「待たせたかな。といってもこの様子だと、助太刀は無用のようだが」


 言いながら、彼は周囲の騎士に指示してフィーアを守らせるよう陣形を組ませる。

 そのまま、自分は俺と並び立つように歩いてきた。


「……そうでもなさそうで。あの魔物、少し様子が変です」


 いいながら、俺が指差す先にいる魔物は、なにやらその姿が変化していた。

 陰が足元に広がっていくのだ。

 そしてそこから……小型の魔物が、複数出現した。

 こちらが数を増やしたのに対し、向こうも対抗してきているのだ。

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