第188話 変質①

 すぐに執務室へ取って返し、ホーキンス殿に確認を取った。

 返ってきた答えは――


「曰く、グオリエに変化があったのは、フィーアが前向きになって少ししてからだそうだ」

「そうなると無関係……じゃないよね」


 おそらくそうだろう、と頷く。

 ホーキンス殿も、俺達の想像を聞いて納得できると言っていた。


「グオリエはフィーアが前向きになったことで、と感じた可能性がある。そう考えると、その失望が呪本を引き寄せた可能性がある」

「どちらにせよ、呪本に適合してどうして数年以上潜伏していられたのかという疑問はあるデスが」


 カミア皇女の疑問に、俺は言葉を返す。

 少し、思うところがあるからだ。


「絡繰は解らないが、仮に推測が合っていれば、一つ変なことがあるんだ」

「変なことって? もうすでにずっと変なんだけど」

使?」

「……あ、そういえばそうだね」


 俺とグオリエが決闘した時。

 グオリエにとっては、絶対に負けられない戦いだったはずだ。

 その時に呪本の力を使わず、一体いつ使うというのか。

 だが、奴は使わなかった。


「とにかく、奴は決闘で力を使わなかった。そこにどんな意味があるかは解らないが……決闘の後、グオリエは俺を脅した件で教師に連れて行かれただろう」

「うん、すごいスッキリしたけど」

「デスね」

「ホーキンス殿が言うには、あの後グオリエの父親がやってきてグオリエはそのまま実家に連れて行かれたそうなんだ」


 するとどうなるか。

 まだ話が見えていない二人に、俺は核心を告げる。


「寮のグオリエの部屋は、そのままになってるんだ」

「……!」

「とはいえ、その後バファルスキの侍従が来て、荷物は片付けたそうなんだが……」

「侍従でも気付けないような何かが、隠されたままになってるかもしれない?」


 頷く。


「ホーキンス殿は、グオリエが軟禁されていた別荘は自分の手ですべて捜索したそうなんだが、寮の方は部下に任せてたそうでな」

「ホーキンスさんも、寮の部屋に何もないって断言できないんだね」

「そうなる」


 とにかく、これで方針は決まった。

 次に目指す場所は、グオリエの部屋だ。


「二人は寮に入ってないデスから、アタシが案内するデス。男子寮デスが、事情をそれとなく話せば入れて貰えるでショウ」

「ありがとうカミア! よしじゃあ、次はグオリエの部屋に出発!」


 フィーアが手を振り上げて――


「……正直、したくないなぁ」


 がくり、とうなだれるのだった。

 まぁ、気持ちはわかる。

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