第187話 憎悪⑦
「見てた……って、なんでまた」
「さぁ、そこまでは解らないデス」
曰く、グオリエは別にずっとフィーアの事を追いかけ回していたわけではないそうだ。
王城へやってきた際、フィーアを見かけたら目で追っていた程度とのこと。
それはむしろ、その程度の観察に気付いていたカミア皇女の気配察知が恐ろしいという話になるのではなかろうか。
「よかった……ステラフィアの頃からストーカーされてたわけじゃないんだ」
「ちょっといい方が悪かったデスね。ごめんなさい、ステラフィア」
「ううん。あと、この姿の時はフィーアでいいよ、こっちもフィーアとして話してるし」
「では……フィーア」
そこで、少しカミアは更に真剣な声音になる。
本題はこの後、ということだろう。
「グオリエは確かにフィーアの事を見ていたデスが、それもある時期を境になくなったデス」
「なくなった? どうして……?」
「なくなった時期は、フィーアがどこかへ出かけて、前向きになって帰ってきた頃デス」
――それは。
フィーアと二人で視線を合わせる。
俺とフィーアが出会った頃だ。
その頃を境に、グオリエはフィーアを見なくなった。
「ねぇハイムくん。さっきのホーキンスさんの話だと、グオリエってある時期を境に今の性格になったんだよね?」
「ああ、そうだな」
「それって……私が前向きになった時期と、近かったりしないかな」
それは――
少し考える。
グオリエは、ある時期を境にフィーアを観察しなくなり、粗暴になった。
それが一致するとして。
同時に、グオリエがフィーアに意識を向ける理由。
二人がどちらも、かつては内気な性格だったことを、思い出す。
「……グオリエがフィーアを観察していたのは、同類だと思っていたから?」
「うぇ? ……同じ内気な性格の貴族だから、勝手に親近感が湧いてたってこと?」
「フィーアが前向きになった後、観察をやめたところからの推測だよ」
粗暴になった時期は、ホーキンス殿に確認するとして。
もしそれらの時期が一致した場合。
俺は、ある考えに思い至る。
「……いや、でもそれは」
ありえない。
そう、切って捨ててしまいたくなる。
「ハイムくん?」
「……呪本に適合した場合」
だって、もしそうだとしたら。
「適合者は、精神がネジ曲がる」
「…………まってくだサイ、ハイム。それデスと」
二人の視線が、こちらに向く。
それは、単なる仮説でしかない。
でも、仮説だとしても。
「グオリエが呪本に適合したのは、今ではなく。フィーアが前向きになった後のことだった?」
ただでさえ暗中模索の現状。
口に出さざるを、得なかった。
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