第178話 通り魔⑥

 騎士団……というか、相談に乗ってくれたホーキンス殿の答えはこうだ。


「学生に危険なことは任せられない……が、ハイムくんなら話は別だ。君はすでに騎士団でも上から数えたほうが早い実力を有している。それに、君自身功績を立てたいのなら、こういうときに積極的に行動するのは正解だ」


 とのこと。

 そして、グオリエの”おかしな”点に関しても。


「確かに、グオリエならもっと粗暴な力に目覚めている可能性は高い。だが、あいつをそばで見てきた僕は……今のヤツの行動が腑に落ちる点もあるんだ。具体的な事は言えないけど……」


 とのこと。

 ともあれ、身内であるホーキンス殿も違和感は感じているようだ。

 そのうえでそれを解き明かすためには、直接相対して答えを見つけるしかない、とも。



 そして時間は今に戻る。



「っと、ぉ!」


 俺は飛びかかるグオリエをギリギリで回避する。

 身体強化魔術を使っているが、それでも結構な速度だ。

 近接戦では圧倒される可能性が高い。


「流石に、カミア皇女やラーゲンディア殿下より強いと言うことはないと思うが……」


 俺は、幾つかの魔術を同時に行使する。

 今俺がいる場所は市街地であり、狭い路地裏だ。

 あまり派手な魔術は使えない。

 そして、こういう場所で有効な魔術は二つ。


「土塊よ、束縛せよ!」


 一つ、地面に対して効果のある魔術。

 影となったグオリエの足元を土塊魔術でいじくり、身動きが取れないようにする。


「光弾よ、射殺せ!」


 もう一つは光魔術。

 マナを光のエネルギーにして飛ばす魔術だ。

 元々、単なるエネルギーでしかないそれは他の魔術と比べて殺傷能力が低い。

 だが、人を一人制圧するには十分という、扱いやすい魔術。


「……!」


 それらを同時にくらったハイムは――足元を強引に壊しながら飛び退いた。


「上級の土塊魔術を悠々と壊すが、光弾魔術は避けるか」


 影だから、光弾魔術の効果が高いのか?

 どちらにせよ俺が取るべき戦術は変わらない。

 光弾を飛ばしながら距離を取る。


 グオリエは光弾をすべて避けながら接近してくるが、避けているせいで近づくことはできない。

 そのまま、しばらくそうした後。


「今だ、……光よ!」


 僕は、光魔術を初級の上級化で発動する。

 するとグオリエを囲むように光が生まれる。

 少しの間、距離を取りながら戦闘したのはグオリエの回避性能を測るためだ。

 奴はこれを回避することはできない。


 グオリエが両手を交差すると、光魔術が着弾した。


「……どうだ!?」


 光が収まる。

 そこからでてきたのは――


「…………効果あるんじゃなくて」



 無傷だが、露骨に顔をしかめたグオリエだ。



「不快だから、受けたくなかっただけか」


 俺は、苦虫を噛み潰した。

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