第177話 通り魔⑤
少し時間を遡って。
「……グオリエをおびき寄せたい!?」
「ああ、ダメかな?」
「だ、ダメっていうか……いや、危険でしょ!? 気持ちはわかるけど、騎士が動いてるのに学生が無茶をする必要はないって」
フィーアに、俺はある相談をした。
俺の存在を餌に、グオリエをおびき寄せられないだろうか。
当然、フィーアから帰ってきた返事は色よいものではない。
「もちろんそれはわかってるし、だからこそフィーアに協力を求めてるんだ」
「……一応、言い分は聞きます」
「まず、おびき寄せるのに騎士の協力は求める。俺がグオリエを見つけたら合図するから、そこに駆けつけてもらうんだ」
「まぁ、それは当然だよね」
流石にそこを怠るつもりはない。
というよりも、俺としては俺が騎士に協力したほうがうまく行くと思ったからやっているのだ。
「そのうえで、騎士はこれまで奴を発見できていない。女性が襲われているという条件がわかっていても、だ」
「……騎士の人も、囮調査とかはやってるってことか」
「グオリエの側にそれを見分ける能力がないと、不可能だろこれは」
そこで俺の出番というわけだ。
グオリエは女性――おそらくフィーアを探している。
だが、俺が一人で歩いていても姿を見せるのではないだろうか。
グオリエにとって俺はフィーアの次に無視できない存在だろうからな。
「つまり。このまま騎士がグオリエを探していても効果が薄いようなら、ハイムくんが協力するべきだ……ってこと?」
「そうなる。もちろん、騎士団の判断次第だが……」
「だったら……聞かせて」
真剣な顔で、正面から俺を見るフィーア。
こんな顔、今まで見たことなかったな。
「どうして、そこまでしてグオリエに会おうとするの?」
「おかしいんだ」
「おかしい?」
「もしグオリエが呪本に適合したとして、こんな理由のわからない能力を発現した理由が知りたい」
呪本に適合した場合、適合者は本人の性格によって発現する能力が変わる。
すべてを破壊したいものは暴走し、すべてを支配したいものは傲慢さと力を手に入れる。
グオリエなら、普通は後者になるものじゃないか?
「そもそも、呪本が適合してここまで、誰一人として死者が出ていないのも変だ」
「被害は出てるけど……怪我だけだもんね」
今のところ、グオリエは取り返しのつくような被害しか出していない。
別にそれを理由に奴を擁護するわけじゃないが。
俺の知る奴の性格との乖離は、無視できない。
「……とりあえず、お兄様かホーキンスさんに相談してみる」
「ありがとう、フィーア。よろしく頼む」
そう説明したからだろうか。
フィーアは、とりあえず騎士団に取り次いでくれると約束してくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます