第162話 過去②(他者視点)
幼い頃のステラフィア――フィーアは、引っ込み思案な性格だった。
本人の気質というよりは……立場によるものが大きかっただろう。
マギパステル王家……というよりは、フィオルディア王の子供に妾の子はフィーアしかいない。
幼いながらに才覚を発揮した兄が、すでに王太子として認められ後継者争いがおきていなかったため、兄弟姉妹の中は平穏そのものではあったものの。
妾の子であるフィーアの居場所は、あまりにも小さかったのだ。
幸いにも、他国の皇女であるカミアは良くしてくれて。
側仕えの者も優しいものが多かった。
フィーアは何不自由なく成長したが、だからこそ肩身の狭さというコンプレックスは彼女にとって一番の問題となった。
父は優しくしてくれたが、誰か一人を特別扱いする人ではなかった。
もしかしたら、妾の子を他の子供と同列に扱うのは、特別扱いかもしれなかったが。
母は、忙しい人だ。
父の側室でありながら、同時に国の騎士達をまとめる軍人でもある。
彼女が母でいられる時間はあまりに短く、なにより母はとても破天荒な人だ。
フィーアは、彼女に対して母としての尊敬も愛情も確かにあったが、同時に母親のことを「変な人」と思っていたことも否定できない。
そんな母が、突然自分を外に連れ出すと言った。
父の許可こそ取っているものの、お忍びで、誰にも知られてはいけないのだという。
それはフィーアが外へ連れ出されたこともそうだが、フィーアの正体もだ。
母は幾つかの街をめぐり、そこでフィーアはいろいろなものを見た。
よく覚えてはいないけれど、拉麺の味を覚えたのも、たぶんこの時だろう。
そうして、最後にやってきたのが――
アインヘリア傭兵団。
母の故郷だった。
フィーアはそこで、普通の子供として扱われた。
傭兵団の子どもたちに迎えられ、王女ではなく母アストラの子供として輪の中に加わったのだ。
とはいえ、基本的に元気盛りな子どもたちについていくのは、当時のフィーアには難しい。
彼らはフィーアに良くしてくれたが、馴染むにはあと一歩がうまく行かない。
当時のフィーアの引っ込み思案な性格が、それを邪魔していた。
そんな時、フィーアはあまりその輪の中に加わっていない少年がいることに気がついた。
いつも一人で本を読んでいることが多く、かといって周囲から排斥されているという程ではない。
どこにでもいる。
けれども、少しだけ他とは違う気がする。
そんな少年。
それが、フィーアとハイムの本当の――最初の出会いだった。
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