第148話 功績④
「――――!」
フィーアの叫び声は、もはや言葉になっていなかった。
よりにもよって、俺が一番ありえないルールを提示したと思ったのだろう。
まぁ、実際俺もそう思う。
ただ、ラーゲンディア殿下は少し考えた後、あることを俺に聞いた。
「魔術禁止……もし、仮に魔術を使った場合はどうなる?」
「それは当然反則負けですよ。魔術は使えば解るのですから」
「……理解った」
試すような視線。
俺はそれを、涼しい顔で受け流す。
「敗北条件は?」
「剣の破壊、もしくは喪失。後は相手が敗北を認め降参した場合」
「妥当なところだな」
殿下が頷く。
ルールに関して話し合うことは、この程度でいいだろう。
ようは、授業でやった模擬試合や、フィーアとカミアのやった模擬試合と同じルールだ。
身体強化を使わない剣術試合としては一番オーソドックスなルールを選択している。
これしか勝ち目のあるルールがないからだ。
「じゃ、じゃあえっと……お互いの要求は?」
フィーアがおそるおそる問いかける。
決闘は、お互いの要求を賭けて戦うものだ。
あくまでたんなる模擬試合ではなく、決闘という方法を用いる以上、形だけでもその要求は確認する必要がある。
「フィーアとの付き合いを、認めていただきたい」
「理解った。では私は――」
殿下は俺の要求を了承し、自分の要求を口にする。
一拍、呼吸を置いて。
「学園を卒業したら、騎士団に所属してほしい」
「え!?」
驚いたのはフィーアである。
まさか、そこまではっきりと要求してくるとは思わなかったのだろう。
でも、正直これも、形式的なものが大きい。
「いやフィーア、俺はこの要求を呑まなくても卒業後は騎士団に所属しようと思ってるよ」
「そうなの?」
「それが、フィーアと結婚するのに必要な功績を稼ぐ一番の近道だからな」
「けっこ!!」
ぼん、とフィーアが真っ赤になる。
今まで、功績功績とは言ったが、直接結婚の単語を出してこなかったからな。
ともあれ。
これですべての事前準備は終わった。
もともと、こうするつもりで殿下は俺達を修練場に呼び出したのだろう。
後はこの場で、フィーア立ち会いのもと決闘を行えばいい。
「フィーア、決闘開始の合図を頼む」
「……はっ」
真っ赤になったまま停止していたフィーアに呼びかける。
「そ、それじゃあお互い要求の……省略! この後更にハイムくんから追撃をくらいたくないので、立会人権限で省略!」
「私の人生で、要求の確認を省略されたのはこれが初めてだな」
「うるさいよお兄様! それでは両者、準備はいい?」
何か、だいぶぐだぐだだけれども。
俺達がが頷くと、フィーアは神妙な面持ちをなんとか取り繕った。
「では……はじめ!」
その言葉を合図に、俺と殿下は木刀を構える。
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