第138話 騎士団④

「ということは、二人もラーゲンディア様とホーキンス様の話をしていたんデスね」

「まぁ、そんなところ。流石にこんだけ話題になってればねぇ」


 結局、カミア皇女と合流しても、話す内容は変わらない。

 王太子殿下と黒鷹殿。

 皇女だって知らない相手ではないだろう。

 むしろ、皇女は王太子殿下のことをだいぶ知っているような口ぶりだ。


「皇女は王太子殿下と親しいのだろうか」

「はいデス。ラーゲンディア様は剣の達人デスから、武道大会だけでなく、比較的何度か帝国に招かれて剣の披露をしてくれるデス」


 やはりか、そんな気はしていたが。

 王太子殿下の勇名ならば、剣の国ソーディアルにおいては尊敬の対象だろう。

 とはいえ、武道大会で優勝を掻っ攫われるのは国の威信に関わる気がするが。

 まぁ、そこは俺の気にするところではないな.

 学内対抗戦ならばともかく、帝国の武道大会にまで出場することはないだろうし.

 フィーアについて行ったとしても、俺は来賓にはなるわけないので、観光がメインになるはずだ.


「アタシ個人も、昔から稽古をつけてもらってるデス。アレで教え上手なんデスよ」

「アレで!?」

「いや、俺は王太子殿下の人となりを全く知らんのだが……」


 後、フィーアはそのメチャクチャびっくりしている顔をやめなさい。

 自分には厳しいのに他国の姫にはやさしいんだなみたいな顔をやめなさい。

 一応カミア皇女には正体がバレてないことになってるんだから。

 正直フィーア自身も、バレてることに気付いてるんじゃないかと、普段の皇女に対する対応を見てて思うことはあるが。

 建前というものがあるでしょう。


「ふふふ、まさに王の器に相応しき人物、あえばハイムもわかりマスよ」

「いや、俺は流石に平民だから、王太子殿下へお目どおりするつもりはないのだが……」

「まぁ、機会があればデス」


 ううむ、なんかこう、望まずとも機会が訪れそうな気がビンビンするのだが。

 いや、いずれ向き合う相手だったとして、今この瞬間に? と思うのも当然だというだけで。

 せめてもう少し覚悟に時間を割きたいというか……


 なんて思っていたのだが。

 まるでそれが何かの呼び水だったかのように。

 突如、学園は騒がしさを増した。

 いや、騒がしいというのも正しくない。

 なんというか、空気が変わったのだ。


 むしろ、学生たちは一様に口をつぐんでいる。

 圧倒されているというか……


「来た見たいデスね」


 そんな中、窓の外から入り口に現れた王太子殿下を、皇女は何気なく見下ろしていた。

 フィーアですら、若干空気に飲まれている。

 この状況で自然体でいられるのは、皇女だけだろうな。

 

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