第136話 騎士団②

「お兄様と黒鷹様かぁ。なんだろう、また面倒な事件でもあったのかな」

「いや、全く聞いていないが」


 ここ最近あった事件なんて、例のグオリエの件と先日捕まえた物取りくらいだ。

 全くもって平穏そのもの。

 としか言えない感じなのだけど、王太子殿下とその側近が何かしらの行事でもないのにやってくるあたり、相当変なことが起きているんじゃないかという気がしてくる。


 ただ、それ自体は教師が俺とフィーアに話してくれる程度の情報封鎖しか行っていないらしい。

 おそらくホームが始まることには、学園中で話題になっているだろう。

 うちのクラスはわからんが。


「“赤獅子“ラーゲンディア・マギパステル王太子殿下と、“黒鷹“ホーキンス・バファルスキ殿……か」

「私にしてみれば、聞き馴染みのある名前なんだけどね」


 その二人が聞き馴染みあるのは、間違いなくこの学園でフィーアだけだよ。

 グオリエですら、兄はともかく王太子殿下と日常的な付き合いなんてないだろう。


 ともあれ、どちらも国を代表する存在だ。

 第一王子であり、第一王位継承者。

 つまるところ次代の王であるラーゲンディア殿下と、その側近ホーキンス。

 その勇名は国内外に広がっている。


 曰く、剣術無双、曰く、勇猛果敢。

 父であるフィオルディア陛下が生粋の魔術師であるのに対し、ラーゲンディア殿下は国一番の剣士だ。

 昨年の帝国武道大会で優勝し、大陸一とも言われる武勇を誇る。

 そうでなくとも、幼い頃から剣の天才と噂された逸材。


 そして側近ホーキンスは、同年代で唯一ラーゲンディアについていけたことから側近となったこれまた剣の天才。

 それ以外にもホーキンスは魔術や政、つまり文官としての才能に溢れ、次期宰相と名高い。


「まぁ、お父様の後を継ぐのがお兄様なら、この国は後百年は安泰だろうねぇ」

「フィーアがそこまでいうなら、まぁそうなんだろうな」


 何にしても、人材豊富で素晴らしいことではないか。

 と、平民ながらに考えてしまうのだが。


「……ぶっちゃけ、ハイムくんもその豊富な人材の枠に入ってない?」

「そうか?」

「だってお父様に並び立つほどの魔術の天才だよ? ホーキンス様は魔術もそれなりに嗜むけど、本領はやっぱり政治関係だし。ハイムくんが魔術を埋めれば、これぞ無敵なり!」

「恐れ多い気もするなぁ」


 とはいえ、フィーアと付き合っていくなら、その二人に並び立たないとダメなのか? とも思うので。

 まぁ、他人事ではいられないよな、と考えるのだった。

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