第121話 剣術クラブ③

 どうやら、フィーアとカミア皇女はこの剣術クラブで知り合ったらしい。


「フィーアはアタシから見ても才能がありマス。剣術クラブに入らないの、勿体ないデス」

「そんなにか……」


 確かに、フィーアの才能は素晴らしいものがある。

 一介の貴族が持つ才としては、それを活用しないのが惜しいくらいに。

 だが、悲しいかなフィーアの正体はステラフィア王女。

 普段は忙しく、剣術クラブに通うことは難しい。


 その点、カミア皇女は剣術クラブに通うことがある意味でだ。

 剣の国ソーディアル帝国。

 その顔役として、剣術クラブに所属するのは自然なこと。

 そのうえで、色々な公務やら、学業にも励まなくてはならないとなると、フィーアとはまた違った大変さがあるな。


「えっと、カミア。私ね? 今日は割と本気で剣術クラブに入ろうと思ってるの」

「ホントデスか!?」


 フィーアが言うと、カミアはわかりやすく目を輝かせた。

 なんとまぁ、仲の良いことで。

 学園では貴族の身分は関係ないという建前はあるものの、皇女を下級貴族カラットの立場で呼び捨てにできる当たりは、さすがフィーアといったところか。

 俺には無理だ。

 そして、それがカミア皇女にも解るから、彼女は俺を「皇女」呼びでいいと言ってくれたのだろう。


「そういえば、例の乱暴者の件が片付いたのデシタね」

「うん、あいつももう学校にはいないから、好きな時に会えるね」


 グオリエの話だ。

 剣術クラブに入るのは、奴がいなくなったからというのも多少ある。

 それと、グオリエがカミアに迷惑をかける可能性を考えて、二人は中々会うことができなかったようだ。


 ともあれ、カミア皇女に案内されて剣術クラブを見学する。

 剣術クラブは外の修練場で普段は活動している。

 冬になると建物の中で活動するそうだが、基本的には修練場がホームだそうな。

 そろそろ夏になるのもあって、皆額に汗を浮かべていた。


「皆頑張ってるねー」

「夏には、学内対抗戦がありマス。秋には帝国主催の武道大会。どちらも大変栄誉デス、熱が入りマスね」


 学内対抗戦。

 魔導学園には剣術クラブ意外にも、幾つかの戦闘系クラブがある。

 そういったクラブによる決闘形式の大会が、学内対抗戦だ。

 帝国主催の武道大会は、それをソーディアル帝国を舞台に移し、より大規模にしたもの。

 こちらは貴族だけでなく、在野の冒険者とかも参加する。


 なんて話をしながら、修練場の空いている一角に案内された。

 そして、周りからは視線。

 ……これはもしかして、アレか?


「ではフィーア! 久しぶりに――やりまショウ! 模擬戦!」

「……! うん!」


 目を輝かせる剣士二人。

 ああやっぱり、そういう流れになるのね。

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